第7話「運命の依頼②」

-現在-


直樹と美紀はこの日、岡本総司の墓参りをしていた。

直樹はその道中美紀に尋ねられ半年前の事を思い出しながら話していた。


総司の墓の前で手を合わせる直樹と美紀。


墓参りを終わり帰ろうとする。

「それで、さっきの続き話して下さいよ」

美紀は話の続きをせがむ。

「ああ……えっとな……」

直樹はまた半年前の事を美紀に話始めた。


-半年前-


芝原から受けた依頼の調査を開始した総司と直樹。

まず、黒沢に近付く為に直樹が黒沢の会社に清掃員のアルバイトとして潜入した。

社内の掃除をしながら何とか情報を入手しようとする直樹。

無線から総司の声が聞こえる。

「直樹、どうだ?何かわかったか?」

「おやっさん……いや、まだ何も……とりあえず黒沢は今会長になってるから会長室の周囲を掃除しながら調べようと思う」

「そうか……気ぃ付けろよ……その会社なかなかヤバそうだ」

「おやっさんの方は何かわかったのか?」

「ああ、ちょっとな……」

総司の方は早くも何かしらの情報を入手した様だった。

その情報によると黒沢は刑務所に収監されている数人の犯罪者達の保釈金を自ら支払い犯罪者達を釈放させていると言う。

「その情報どっから?」

「小僧……探偵ってのはな……常に情報のネットワークを張り巡らせておくもんだ。覚えとけ」

「はぁ……」


直樹は掃除を装い会長室の前まで来た。

「ここだな……」

辺りを警戒しながら会長室の扉にそっと耳を当てる。

だが、当然完全防音になっており何も聞こえるはずがない。

「ダメか……」

直樹は諦めて立ち去ろうとしたその時、廊下の向こうから誰かの話し声が聞こえて来た。

「まずい……」

声の主はこちらに近付いて来る。

直樹は慌てて物陰に隠れる。

すると、そこに現れたのは……、


黒沢会長と秘書の神坂だった。

「神坂君……例の計画は進んでいるかね?」

「はい……着々と進んでおります。明日その件で土門様と六ツ木様と打ち合わせをする予定になっております」

「そうか……なら明日は私も行こう。私も彼らに会っておかなくてはな」

「かしこまりました」


黒沢と神坂は会長室に入って行く。


「計画?」


直樹はそこでしばらく待機していた。

少し経ってから黒沢と神坂が出てきた。

「では会長、そろそろ会議が始まりますので」

「ああ、行くとするか……」

黒沢と神坂は会議に向かった。


直樹は無線で総司に連絡する。

「おやっさん、奴ら出掛けるみたいだ……今の内に会長室に盗聴器を仕掛ければ何かわかるかも知れないぜ?」

「そうだな……出来るか?」

「ああ、勿論」


直樹はこっそりと会長室に入る。

そしてデスクの下に盗聴器を仕掛けた。

「よし、ちょろいちょろい」


盗聴器を仕掛けると直樹は会社から出てきた。

「おやっさんいいぜ」

「ああ……」


しばらくして黒沢と神坂が会長室に戻って来た様だ。

「神坂君、今日はご苦労だったね。もう上がりたまえ」

「はい、それでは失礼させて頂きます」

「明日は土門君と六ツ木君に会うからなキーの用意は抜かりないね?」

「はい、既に用意したおります」

「彼らに渡すキーはヴィランキーの中でも特に強力なキーだ。扱いには十分注意が必要だぞ?」

「はい……彼らなら大丈夫かと」

「15年前君も苦労しただろう」

「ああ……そんな事もありましたね……確かにこれは……悪魔の力ですよ……」


総司は彼らの会話を聞きある予感がしていた。

「悪魔……15年前……?まさかな……」

「おやっさんどうした?」

「直樹、今日は帰るぞ。明日が勝負の日だ」

「え?あっ、ああ……」


その夜事務所で総司は調べ物をしていた。


「やっぱりコレか……」

「おやっさん何見てんだ?」

総司はパソコンでネットの記事を見ていた。

それは15年前に起きた悲惨な事件の記事だった。

「この事件……俺も小学生だったけど、覚えてるぜ!」

その事件は『刑事一家惨殺放火事件』と見出しが出ていた。

「この事件で唯一生き残った当時小学生の少年が父親が犯人は炎の怪物と言ったと残されてる」

「炎の怪物?」

「ああ、これはまだ、俺の推理の域を出ないが……この炎の怪物と黒沢は何か関連があると見てる」

「え……?」


そして翌日、総司と直樹は朝から黒沢の動向を追っていた。

だが、動きがあったのは夜だった。


総司と直樹は黒沢の会社の外を見張っていた。

するとそこに1人の男がやって来た。

業務時間はとっくに過ぎている今さら会社に来るのはおかしいと思った総司と直樹はその男を尾行する。

その男は真っ直ぐ会長室まで向かった。

男はドアをノックすると中に入って行った。


総司は盗聴器で中の会話を聞く。


「やぁ、待ってましたよ土門君」

「あんたが黒沢さんかい?見知らぬ俺の保釈金を払ってくれるなんて何が目的だ?」


(コイツが土門か……)

総司が会話を聞いていると直樹がこちらに近付いて来る足音に気付いた。

「おやっさん……誰か来る」

「チッ……隠れるぞ」

総司と直樹は物陰に隠れた。


そこにやって来たのは若い男だった。

その男もドアをノックして会長室に入って行く。

「やぁ、君が六ツ木君か」

「会長、待って下さい」

「ん?どうした?」

「他に誰か居ます」

「何っ!?」

「さっき六ツ木様が入って来られた時六ツ木様以外に2つ影が見えたもので……」


気付かれた!

「まずい……離れるぞ……」

総司は急いでその場を離れる。

「あっ、ちょっと待ってくれおやっさ……」

直樹は総司を追おうとしたが、足が縺れ転んでしまった。

「バカ!」


「誰です?そこに居るのは……」

神坂が出て来た。

「ぐっ……」

直樹は見付かった。

「誰だ貴様はっ!!」

黒沢が警報を鳴らすと多くの人間が近付いて来る足音がした。


「直樹!こっちだ!」

総司の呼び掛けで直樹は立ち上がり総司の方に走る。

「逃がすか!」


総司と直樹は必死に逃げる。


続く……。

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