偽物だらけの島

 南洋の小島を訪れた民俗学者が、島に棲む恐ろしい何かに遭遇する物語。

 孤島を舞台にした民俗学ホラーです。
 舞台となる島の設定もう面白い。「よその伝承の剽窃や作り物の遺構の寄せ集めで出来た島」という前置に、否が応でも興味を惹かれます。

 観光のために偽物の歴史を散りばめた島の中、しかしじわじわとその姿を表す何か〝本物〟の気配。
 かえって不気味さが際立つようで、ゾクゾクしながら読みました。

 民俗学や地質学など、さまざまな知識に裏打ちされた丁寧な描写が魅力。
 堅牢な読み応えが嬉しいホラー作品でした。