第十一話 屋上で一緒にお弁当?

「起立、礼、着席」


 昼休みになると、有紗は教室から出て行ってしまう。後を追うように太一も行ってしまった。


「どうよ、これ」


 僕の席に来て田中さんが有紗と太一の出て行った方を指さした。


「どうと言われましても……」


「へたれ!!」


「うるさいな、田中さんはどっちの味方なんですか」


「わたしは有紗の味方。あんたの味方でも、もちろん太一の味方でもないわよ」


「どこ行ったんでしょうね」


 後ろに座る慎吾が口を挟む。きっと俺もいますアピールなんだろう。


「誰だっけ?」


「ちょっと待ってくださいよ!!」


「冗談、冗談、教室にいるモブその1だったね」


「ドラ○エの村人その1のような言い方で言わないでください。俺は名前のある村人くらいの立ち位置はあると自覚してます!」


 村人でいいのか、そんな疑問が湧いてくるが、正直どうでもいい。そんなことより有紗だ。


「冬月さんがどこに行ったのか分からないけど、とりあえず屋上で打ち合わせしませんか?」


「だねえ、佐藤わかってるじゃん」


「だから、俺も名前くらい覚えてくださいよ」


「友人その1?」


「もう、それでいいですよ!」


 それでいいのか、それにしても友人その2なんて現れるのだろうか、などと本当にどうでもいいことが頭に浮かんだ。


 屋上の扉を開けると、数組のカップルが一緒にお弁当を食べていた。そこに有紗は……。


「ワンちゃんいると思ったんだけどなぁ」


 田中さんも思っていたんだ。それにしても、どこに行ったんだろう。


 僕たちはそれぞれ弁当を出した。田中さんも弁当派なのか。慎吾は購買で買ったパンとミルクコーヒーだった。


「まぁ、いいわ。今は有紗のことよりも現状把握だね。で、佐藤は今朝ちゃんと迎えに行ったんだろうね」


「もちろん、行ったよ」


「ちゃんと話してくれた?」


「うん、屋上で何してたんでしょう、って3択クイズされたから、ちゃんと抱きしめられてたって言ったよ」


「はあ! 何よそれ。あんたそれを遠巻きに見てたの? 馬鹿なの。死にたいの?」


 その台詞は少しパクリじゃ、とどうでもいいことが頭に浮かぶ。それにしても田中さんらしい台詞だ。


「いや、佐藤は出て行こうとしたんですが俺が止めたんですよ。状況が見えない訳ですから、そこで飛び出したら、色々と問題になることあるじゃないですか」


「あんた、有紗が太一に気があるって本気で思ってるの?」


「そこは俺も分かりませんがね。ただ可能性の一つとして今否定すべきじゃないですし、それより……、脅されていたとしても今飛び出すことはプラスに働かないかもって」


「まあ、そうかもね。友人その1にしては考えたわね」


「だから、その友人その1やめましょうよ」


「うるさいわねぇ」


「先話していいかな?」


 抱きしめられた件に関しては、慎吾が説明してくれた以上の話は必要ないと感じた。それよりも先の話の方が重要だった。


「いいよ、先話して……、今は佐藤の今日のことを聞いてから結論下さないとね」


「うん、冬月さんに二つ目のお願いを使っていいか聞かれた?」


「二つ目のお願い? はぁ?」


「あっ」


「あっ、て何?」


 ここまで来たらこの話もしないとならないのか。僕は一昨日あった話を簡潔に話した。


「はぁ、あんたの家に有紗が……、なにそれ。でぇ、三つのお願いだと!」


 エッチな話を隠して話したが、目の前の田中さんは僕を思い切り睨みつけた。


「どう言うことなのよ、有紗! いつの間に急接近してんのよ」


「すみません」


「謝っても何も出ないわよ。それよりさ、その二つ目のお願いってなんだったのよ」


「冬月さんに中間テスト一科目もいいから勝つのと、上位30番以内に入ってくれって」


 流石に勉強を教えてくれると言う話は止められそうだから、辞めておいた。


「うーん、そっか。勉強の話と屋上で太一の話、どこかで繋がってそうね」


「僕もそう思います」


 なぜ、有紗が太一に抱きしめられたことと、僕の勉強の順位と関係あるのか。確信部分は分からないが……。


「じゃあ、佐藤は30位以内死ぬ気で取らないとね。取らない場合の罰ゲームは東京湾に沈められるでいいかな?」


「えーっ、罰ゲームがあるんですか!」


「あった方が死ぬ気で頑張れるでしょ」


「もし、ダメだったら佐藤を本気で沈めるんですか?」


 目の前の慎吾が話に割って入る。どうしても田中さんと話したいのだろう。


「大丈夫。二度と浮かばないようにテトラポットつけて沈めてあげるから」


 冗談かと思って田中さんを見たら般若の笑顔だった。怖ええっ。


「それなら大丈夫ですよね!」


「うんうん、わたし優しいでしょ」


「本気でやりそうで怖いんですけど」


「何言ってるの。本気に決まってるでしょ」


 この人は正直怖い。死ぬ気で頑張るんじゃなくて、本当に死んでしまいそうだ。


「まぁ、良かったじゃん。真実が分かりそうで……」


「僕は正直、田中さんが怖いです」


「えーっ、今更知ったの?」


「カッコいいです。惚れそう」


 目の前の慎吾は、田中さんをじっと見つめていた。お前のは惚れそうじゃなくて、本気で惚れてるだろうが。この、マゾめ、と僕は心の中で思った。


 それにしても大変なことになった。流石に沈められはしないと思うけど、そのくらいの気持ちで行かないと30位なんて取れることはないだろう。


「頑張るしかない、か」


 僕は独り言を言うように呟いた。


「分かってるじゃん。あんたの今の顔かっこいいよ」


「えーっ、田中さんそれはないよ」


「友人その1も連帯責任で東京湾に沈む?」


「いえいえ、そんな滅相もありません」


 隣の馬鹿騒ぎをぼーっと見ながら、僕は決意を固めた。



―――――


 屋上での馬鹿騒ぎがメインのお話です。


 それにしても太一と冬月さんは何をしてるんでしょうか。


 なぜ冬月さんは太一のことを拒絶しないんでしょうか。


 テストで30位取るのと、何か理由でもあるんでしょうか。


 謎が深まるばかりです。


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 星なんかもらった日には飛びます(だから、どこにや!)


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