第四話 お宝ってナニ?

「ねっ、お願い」


 うるうるした瞳で僕の目の前に来る。なんなんだよ一体。


「お宝って、ナニ?」


 思わず僕は聞き返した。言わなくても分かるけども、もしかしたら別のものかもしれない。


「男子って女の子は持ってないお宝を持ってるんでしょ」


「だから、そのさ、具体的に……」


「んっ」


 手をほっぺにつけて、可愛くアピールなのだろうか。可愛いけども、じゃあ見せてあげようとはならない。


「女の子のえっちぃ写真とか持ってるんでしょ? 知ってるくせにぃ」


 やはり、持っていることを確信している目だ。


「お片付けもしてあげるし、いいでしょ」


「そう言うの見つけて、どうするの?」


「どうもしないよ。ただ、……ね」


 ニッコリと笑顔でこっちを向く。じっと見つめながら……。


「わたしの家、妹しかいないから、知的好奇心、かな?」


「その知識は、どこからくるの?」


「男子の家に入った女子は言ってるよ。家に行ったら、あったとかね」


 一体誰のことだろう。それで僕の部屋に入りたかったのか。それにしても……。


「なぜ、僕なの?」


「んっ? 他の男子の方が良かった?」


「いや、そんなことないない」


 可愛い冬月さんが他の男子とイチャイチャしてるところなんか想像するのも嫌だ。もう、やけだ。


「じゃあ、ベッドの下から……んっ」


「ちょっと冬月さぁん?」


「さすがにベッドの下にはないみたい」


 いや、僕に同意を求められても。冬月さんは見た目天使だけれども、結構悪魔だ。


「じゃあ、今度は机の中、てぃ」


「いやぁ、冬月さぁん、こんなことやめようって……」


 エ○本が何冊か、ベッドの間に挟んでいることを思い出した。すぐに見つかるだろう。うちの母親も妹も家探やさがしをしないため、甘く見ていた。


「なんで?」


「なんでと言われましても、なんか恥ずかしいし」


「わたしなら大丈夫だよ。理解あるしぃ」


 どんな理解ですか、冬月さん。僕は思わず心の中で叫んでしまう。小悪魔系美少女の冬月さん。見た目清楚だけれど、結構ぶっ飛んでる。


「うーん、机の中にもないかぁ。じゃあきっとあそこだねぇ」


 冬月さんは、机からベッドに移動して、布団を剥がそうとした。


「ちょっと待って!」


 思わず冬月さんを止めようと腰に手を回した。勢い余って、そのままベッドに倒れ込む。


「えっ、ええっ、えええっ!!」


「あっ、ごめん。これは不可抗……」


 いきなりバンっと言う音が鳴る。冬月さんから目を離し、音が聞こえた扉を見る。


 開け放たれた扉には、ジュースとお菓子を持った母親と、扉を開けた妹の由美がいた。


「兄貴、見損なったよ。まさか、ケダモノだったとはさ」


 妹はこちらに来て、思い切り僕の顔を平手打ちした。パーンと言う気持ちいい音が部屋に広がる。


「平、それはダメよ。流石に人様の娘さんに……」


 僕は慌てて、冬月さんから離れる。


「冬月さん、ごめん。これは、その理由があるんだよ」


「どんな理由なんだよ! 兄貴」


「そうよ、物事には順序があるわ。流石にいきなりなんて、それは人のすることではないわ」


 目の前の冬月さんは、呆然とした表情だったが、少しすると落ち着いてきたのか、ゆっくりと母と妹の方を向いた。


「わたし多分。押し倒されたんじゃないと思う」


 冬月さんはフォローを入れてくれるようで、少しホッとする。それにしても勢いあまって、やばかった。


「抱きしめたかったのかな?」


 前言撤回、しかも凄く悪戯ぽい笑顔なんですけども。


「兄貴ぃ、あんたぁ!」


「ダメよ。平は、もっと相手のことを考える子だったでしょう」


 ちょっと待ってよ。冬月さんの方を見るとベッドから身を起こして、椅子がわりに座っていた。


 僕の耳のそばに近づいて、小さな声で……。


「助けてあげよっか」


 と僕にだけに聞こえるように呟いた。


「すみません。お願いしていいですか?」


 流石に今の状況はやば過ぎる。


「じゃあさ、わたしのお願い三つ。聞いてくれる?」


 内容が分からないけれども、今は藁も縋る思いだ。このままでは、僕は母親と妹に変質者扱いをされかねない。


「分かったよ。お願いします」


 僕がそう伝えると、冬月さんは立ち上がり大きく頭を下げた。


「ごめんなさい。目にゴミが入ったからと言ったら、取ってくれると言ってくれたんですけど、わたし慌ててたみたいで、転んだ拍子に……。わたし慌てていて、思いもよらないことを言っただけで」


「そうなの?」


「そうなんですか?」


 妹の由美と母親は同時に僕の方を向いた。無茶苦茶、言い訳がベタすぎるが、今はこれに頼るしかないのか。


「そうなんだよ。ごめんごめん」


 頭をかきながら、僕は二人に頭を下げた。


「もう紛らわしいことしないでね」


「これ、ここに置いときますから、二人で食べてね」


 ふたりはそれだけ言うと出て行った。良かった単純で……。僕は扉が閉まるのを待って、ため息をつきながら、ベッドの脇に腰を下ろす。


「お願いが三つに増えちゃったね」


 有紗は嬉しそうに僕の隣に座った。もちろん、いつもの悪戯ぽい笑顔だ。


「冬月さん、どんなお願いするのですか?」


「んっ、すぐにお願いしたら、すぐ無くなっちゃうからさ。もうちょっと、考えてからお願いするね。これ有効期限とかある?」


「いえ、無くていいです」


「良かった」


 嬉しそうな冬月さん、と当惑している僕。それにしても、冬月さんって不思議な娘だなあ、と思った。



―――――――


訂正版


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