冬の北岳で死にかける

最時

第1話 決死のトラバース

 斜度は70度くらいだろうか。

 雪壁に付いたふかふかのパウダースノーにできるだけアイゼン、ピック、左手を利かせて慎重にトラバース(横断)していく。


 下はガスって見えないがここで落ちたら壁を転がり落ちると言うより、岩とかにぶつかりながら奈落まで落下して終了って感じだな。

 人生が・・・。


 運良く止まれたとしても、どこまで落ちるかによるけど復帰は相当困難だろうな。

 この悪天候でヘリが来るわけないし。

 このパターンだと比較的綺麗かな。

 遺体が・・・。


 暑くなる前に発見されればの話だけど・・・。


 しかしこの斜度でこんなふかふかの雪が付くわけ無いんだからきっと夏道の上には立ってはいるんだろうな。

 多分・・・。


 稜線からわずか数メートル下とは言え、ここで雪崩れたら耐えられないだろうな。

 それが一番確率の高い危険と思われて緊張した。


 まったく。

 人の言うことを聞かないからこういうことになるんだ。

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