38. これからも一緒に

38. これからも一緒に




 無事にダンジョン攻略依頼を達成したオレたちはそのままギルド『フェアリーテイル』に戻ることにする。その帰り道。レイアはエドガーさんやアンナに色々なことを聞いていた。エドガーさんからはパーティーの組み方や戦い方を教わり、アンナからは自分の凄さを自慢げに話されていた。


「アンナちゃんは普段から魔法の特訓をしてるの!?」


「そうよ!毎日ファイアボールとサンダーボルトを何十発も撃ってるわ!まぁアタシの魔力ならそれぐらい余裕だけど!」


「そんなことしてたのか。意外と真面目なんだなアンナは」


「エミル違うわよ。……リリスがやれって言うからやってるだけよ。アタシはやらなくても大丈夫よって言ったんだけど、それじゃSランクになれないって言うから……」


「リリスさんが?」


 リリスさんはアンナに魔法の特訓をさせていたのか。確かにアンナは魔法の才能はあっても、まだ13歳だもんな。これから冒険者をやるにはそれなりの能力が必要。やっぱりあの人には敵わないな。


「まぁこれでアタシが最強になるのも時間の問題よ!待ってなさいリリス!」


「でも実際魔法を使えば強くなるものなんですかエドガーさん?それなら私もやろうかな」


「魔法を使うこと自体では威力や魔力が上がることはない。魔物との戦闘を通して経験を積むことで強くなるものだ」


「はぁ!?じゃあアタシのこと騙したのねリリス!許さないんだから!」


「最後まで話を聞けアンナ。毎日特訓をすれば詠唱のスピードや魔力コントロールは向上するはずだ。だから、結果的に最強になると言えば間違ってはいない。最強になりたいなら文句を言わずに続けるんだな」


 そうエドガーさんに言われて頬を膨らませるアンナ。その姿が年相応で可愛くてつい笑ってしまう。するとそれに気づいたのか、こちらを睨んでくる。


「何笑ってんのよエミル!」


「いや別に。ほら早くギルドに戻ろう」


 そのまま膨れるアンナをよそにオレたちはギルド『フェアリーテイル』に戻り依頼の完了をする。もちろんその報告をするのはレイアだ。


「あの……初級冒険者ダンジョンの攻略完了しました。これがハイリザードの爪で証明部位です」


「お疲れ様でした。それでは完了の手続きをしますね」


 リリスさんは何事もなくそのまま完了の手続きを進めていく。そんな時レイアが話し始める。


「あのリリスさん!私……やっと気づいたんです。その……最大限の力を発揮する。今なら頑張れます!だから同行依頼を続けさせてください!」


「……だそうですよエミルくん。それを決めるのは私じゃありません。マスターのエミルくんです。今日見ていたんですよね?どうしますか?」


 ……なるほど。だからオレを同行させたのか同義付けか。うーん。やっぱりリリスさんには敵わない。


「もちろん。これからもギルド『フェアリーテイル』で頑張ってほしい。頼むなレイア」


「あっありがとうございます!私頑張ります!」


 とても嬉しそうにするレイア。これでレイア自身も成長してくれるなら助かるよな。


「あのありがとねマスター」


「ジェシカさん。いえ。オレは何もしてません。今回はエドガーさんとアンナがレイアを救ってくれたんです」


 オレが微笑みながらそう言うとジェシカさんも微笑み返してくれる。そんな様子を見てリリスさんがいつものように毒を吐き始める。


「あれあれ?二人見つめあって、もう言葉はいらない。みたいな雰囲気だしてますけど、そもそもジェシカちゃん。私には感謝はないんですか?あー。贔屓ですか。ダメですよ仕事に私情を挟んでは。もしかしてこの前のデートで本当にエミルくんに惚れちゃいましたか?というかどうせエミルくんは大したことしてくれてないと思いますけど、せいぜい私服を誉めたくらいですか?それのどこがいいんですか?本当にチョロいですねジェシカちゃんは」


 まるでマシンガンのような毒舌。もしかして見てました?なんか結構当たってるんだけどさ。


「ちっ違う!そんなんじゃ!」


「えっ……お姉ちゃんマスターさんのこと好きなの?」


「好きじゃないよ!?レイアもなんでそんなこと聞くの!?もう!リリスさん!」


「レイアちゃん。エミルくんがお義兄ちゃんになっちゃうかもしれませんよ?エミルくんは何も良いところがないですけど、一生懸命生きてるのでよろしくお願いしますね」


「ならない!変なこと言わないでよ!」


 またジェシカさんをからかいながらオレにも毒を吐いて楽しむリリスさん。本当にこの人はいつも通りだな。


 そんなこんなで夜になり、オレがリビングに行くとリリスさんがマッピング地図を作っていた。最近は忙しくなってきたから、こういうものを作成する時間も限られてきたよな。正直リリスさんのスキルがなきゃここまでギルド経営は上手くいかなかったよな。


「リリスさん。何か手伝いますか?」


「エミルくん。それならコーヒーを淹れてください。ミルクたっぷりのを」


「はい」


 オレはそのままコーヒーを淹れてリリスさんにカップを渡す。


「うーん。美味しい」


「いつもありがとうございます。オレも何か出来ればいいんですけど」


「……エミルくんはもう色々やってくれてますよ」


「え?」


「ギルド『フェアリーテイル』。私はギルド受付嬢になりたい。ただそれだけの理由で君はここまで一緒に頑張ってくれてます。だから役割ですよ。これは私の仕事、君は……これからも私と一緒にギルド『フェアリーテイル』を盛り上げてくれると嬉しいです。期待してますよマスター?」


 リリスさんはとても優しい笑顔をオレに向けてそう言った。そのあとはほとんど会話はなかったけど、改めてオレもリリスさんと一緒にここまで一緒に頑張れて良かったと思う。そしてこれからも一緒に盛り上げていこうと決意したのだった。

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