36. 業務確認

36. 業務確認




 そして翌日。レイアのダンジョン攻略に同行することになったオレは、事前に事情をエドガーさんに話しておいた。アンナは……まぁ言っても無駄だろうから黙っておくことにした。そしてオレとエドガーさんとアンナはギルド前でレイアを待つ。すると、レイアが走ってやってきた。


「おはようございます!今日はお願いします!」


「ああ」


「安心しなさいレイア。アタシがいれば魔物なんか軽く倒しちゃうんだから!」


「うん。アンナちゃんありがとう」


 そう言って目的のダンジョンへ向かって歩きだす。目的地はここから近い場所にあり、徒歩で1時間ぐらいの距離にある初級冒険者ダンジョンだ。


「あの……なんでマスターさんが一緒に来るんですか?マスターさんは戦えないですよね?もしかしてお姉ちゃんかリリスさんに頼まれたんですか?」


「えっ!?いや……その……」


 レイアが不思議そうにジト目で見つめてくる。鋭い……。オレが少し慌てているとエドガーさんが話す。


「マスターは普段オレたちの同行依頼を見ていないからな。きちんと仕事をしているかの業務確認だろ。そうだよなマスター?」


「あっはい。ギルドマスターとして部下の仕事の管理も必要だから。ははっ」


 ナイスすぎるフォローですよエドガーさん!さすがベテラン盾騎士!人生の先輩!


「はぁ?この天才魔法少女のアタシには必要ないと思うけど?」


 お前は黙れアンナ。オレが感動しているのを書き消すなよ。


「分かりました。それじゃマスターさんは私とエドガーさんで守りながら進みましょう」


「分かった。それとレイア。ダンジョンに潜るのならアイテム屋で回復ポーションを買ったほうがいいぞ。初級冒険者ダンジョンは初級冒険者のためのダンジョンだから、そこまで難易度は高くないが、それでも怪我をするときはするからな。」


「そっそうですね!それじゃアイテム屋に行きましょう!」


「ならメルの店がいいと思うわよ。リリスマナポーションをアタシの為に大量に買いなさい!そしてそれはエミルが持つのよ!」


「おいコラ。なぜそうなった」


「え?だってエミルはリリスのパーティーのとき荷物持ちじゃなかった?違ったっけ?」


 こいつマジか……。やめろよ。その悪気のない顔。断れないだろうが。そしてダンジョンに行く前にメルさんのアイテム屋に向かうことにする。


「いらっしゃいませ。あ。どうしたんですかこんな大所帯で?」


「こんにちはメルさん。実は……」


「これからみんなでダンジョン攻略に行くのよ!アタシの素晴らしい魔法でサクッと攻略してやるんだから!メル。とりあえずリリスマナポーションをちょうだい!」


 オレの言葉を遮りながら、いつものように騒がしいアンナ。本当に元気だよなこいつ。


「アンナ。とりあえず落ち着け。レイア。今回のダンジョン攻略の目的はなんだ?」


「あっえっと……3階層にいるハイリザードの討伐です」


「なら雷属性が弱点だな。ハイリザードは氷属性のブレスを吐いてくるから、凍傷を治す薬か、レイアの魔法で治すならマナポーションを多く買ったほうがいいぞ」


「あ……ありがとうございますエドガーさん」


 エドガーさんは的確にレイアにアドバイスをする。やっぱりベテラン盾騎士は違うよな。頼りになる。そしてアイテムを吟味してアイテムを購入する。メルさんのアイテム屋を出て、今度こそ初級冒険者ダンジョンに向かうことにする。そしてしばらく歩くとダンジョンにたどり着き中に入り更に歩き始める。


「おいアンナ。お前はウィザードだろ。オレより前にでるなよ。危険だぞ?」


「はぁ?アタシに指図しないで!エドガーが前にいると見えないんだもの!」


「あのアンナちゃん……エドガーさんの言うことを聞こうよ。」


「ヤダヤダヤダ!何よレイアまで!アタシは天才魔法少女なんだから!少しくらい大丈夫よ!」


 ……ヤバい。これでダンジョン攻略できるのか?知ってるけど、アンナはワガママすぎる。でも正直このメンバーなら間違いなくアンナが火力要員だし、機嫌を損ねると面倒だな……。


「ならこうしよう。天才魔法少女ならマスターを守りながら攻撃できるだろ?マスターは戦えないんだ。後ろで守ってやれアンナ」


「む~。それなら仕方ないわね。本当にエミルはアタシがいないとダメよね!まったく感謝しなさいよ!」


「あっああ……よろしく頼むよアンナ」


 なんかアンナの扱い方がうまいなエドガーさん。孤児院の子どもをいつも相手しているからなのかな。どっちにしてもこれで何とかなりそうだな。

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