心を一つにする事の大変さを描いた稀有な青春小説

  • ★★★ Excellent!!!

メンバーが心を一つに一つの目的に向かって全力で邁進する青春小説は、数限りなく描かれてきました。しかしそんな至福の青春を送れた人は、どれだけいるでしょうか?
多くの人はむしろ「不完全燃焼」のまま青春を終え、「本気で駆け抜ける青春」に憧れたまま過ごしているのではないでしょうか。
この作品は、「人が集まり一緒に何かをする」事の難しさや苦味を真正面から描いた稀有な青春小説です。
人が「本気出したい」という時期は様々です。そしてサークル活動ではメンバーの目的、技量、熱意もバラバラ。そんな中、一人の思いが先走る事で誰かを深く傷付けもする……。
そんな痛みを伴う青春時代の思い出が、読みながら走馬灯の如く甦ってきました。
しかし、他者との関わりの中で生じる軋轢を恐れず、乗り越える事でこそ得られる物の尊さが、ひしひしと伝わってきます。
あまり馴染みがなかったジャズに関しても、大変興味が湧いてくる内容です。

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