第8話  熟女パブ。


後輩の後輩と言う、ややこしい知り合いが店を出したと言うので、行ってみた。

ほんとはあまり行きたくなかったが、そいつにお願いされたのでしょうがない。


「○○さん、ぜひ来て飲んでいってください。○○さんがこないんじゃ店にハクがつきませんから。」



調子よくおだてられ 頭のよくない俺は、重い腰をあげ、店に顔を出す。



暗い店内…普通のスナックやパブよりも暗い…。


まぁ 暗いのは俺の好み。


店に入り、オーナーである後輩の後輩のやつを呼ぶ。


新規開店のため、やつは忙しく、いろんな席であいさつを繰り返す。


「お前がいても別に楽しくないから他へいっていいよ。俺はおねぇちゃんと飲んでるほうがいい。」


俺は忙しそうなやつを席からたたせ、ひとり、俺につくホステスを待つ。



「いらっしゃい。」


なんだぁ?


ものすごい香水のやつが来たな…。



「はじめまして…アケミです。」



暗い中でもサングラスを外さずに、俺はいつも飲み屋で通す…。


しかし、俺についた彼女を見たとたん、思わずサングラスを外し、絶句しながら、ガン見した。


派手な化粧、振り撒くオーデコロン…なんか、こう書くと妖艶な美女を連想されるかもしれない…。

しかし、事実は違う!


昔、横浜に超有名な“メリーさん”と呼ばれた白塗りの化粧の娼婦がいたのを知る人は多いだろう。


俺は実際に会い、肩に触れられ、会話もしたことがある。


見た目は異形だが、かわいい女だった。


今、俺の目の前にいるのは、異形さにおいてはメリーさんに匹敵するだろう…。


しゃがれた声。


変に下品に聞こえるえっちな話。


俺は固まったまま、酒を飲むのも忘れ、目の前の彼女を凝視している。


ひとりで酒を食らい、しゃべりまくる。

そして、俺の股間に手を伸ばそうとする。



可愛い女性ならそのまま触られたい。


しかし、しみを白塗りで覆ったゴリラのような腕に、俺は我に帰り、その手から逃れる。



「もぅ…ウブなんだからぁ…。」



げっ!



やつはひとりしゃべり続ける…。


つまらない下品な話。


俺は返事も相づちもうたない。



でたぁ!!


話すことがなくなったのか、第二次世界大戦の話になる。


空襲で…どうだら…。


やつの戦争悲話なんか聞きたくない。


あらあら…涙流すふりして…。



だめだ!やつの強烈な臭いとへたなしゃべりに俺は苛立つ!


俺は腹がたった。


飲み屋でこんなに怒るのははじめてだ。


無言で席をたつ。


出口でオーナーを呼び出し、外へ連れ出す。



「お前…いくらなんでもありゃひどくないか?」


「熟女はだめですか?」


「お前…ありゃ熟女じゃねぇ。老婆だ。90過ぎてるだろ…。入れ歯、ガクガクいってたぞ。」


「マニアには、たまらないって思ったんですけど…。」


「金払って飲むのに、へたな話は聞かされるは、勝手に酒注文されて、がぶ飲みされるは…可愛いねぇちゃんなら許すよぉ~…でも、ババァの講釈ききたかねぇ!それにありゃなんだ?強すぎる香水とひでぇ加齢臭で気持ち悪くなる…俺だって、どちらかだけならまだ、我慢する。おまえ、あのふたつがミックスされてみ…へたしたら人、死んじゃうよ。塩素と酵素みたいだせ…おまえ、きづかないの?」


「いや…花粉症で鼻つまってるし…近づくの怖いし…。」


「はぁ~?…おまえ、あと、あのばぁさんの化粧…人類からほど遠くねぇ?あの顔でアケミっていうんだぜ…全国のアケミが気を悪くすらぁ!」



俺は一気にまくしたてた。



「まぁこれに懲りずにまた来てくださいよ…。」


「2度と来るか、ボケ!」




熟女パブ…。


ひと月後には、おっぱいパブに変わっていた…。





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