第2話  残り香


「起きろ~!!」


いつもより、少し早めにお前を起こす。


「髪を洗って、仕事へ行くんだろ?」


まだ、寝ぼけ眼のお前に、おはようのキス。


「ひゃ~!寝坊した!なんでもっと早く起こさやんの!?」


だって、少しでも長く、お前を抱いていたかったから…。 




夕べのお前は、愛しくて、何もさせずに、抱き締めた。


「お風呂入って、髪の毛洗わんと…」


「そんなのかまわん」


「だって、汗臭いやろ?」


「臭くない…」


俺は、無理矢理、ベッドへ引きずり込んだ。


「もう…。アホやなぁ…」


そう言う声が、甘く切な気な声へと変わる。


お前の声が、強く短く発したら、俺とお前は、そのまま、深い眠りに入っていく。




目が覚めて、遅刻のできないお前は、焦りながら、髪のセットにメイクをしている。


「暇が無いから、そのままで行くで…今夜はモツ鍋食べようね」


お前は部屋から仕事へ出ていった。


独り部屋に残った俺は、もいちど、ベッドへ潜り込む。


ベッドの中には、お前の匂い。


コロン?


シャンプー?


化粧の香り?


いやいや、それは、お前の匂い。


俺の好きな、お前の匂い。


布団に移ったお前の香り。


俺は、次の目覚めまで、お前の残り香を抱いて寝る…。

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