第4話:腹ペコは最強!


「ラーク01より、ラーク13へ。どこにいる? 今の地上での爆発はなんだ? 原因を確認せよ」


 あ~。見つかっちゃいました。

 作戦任務放棄は罰金刑。

 さっきの三○○人の戦果で相殺されない?

 戦功確認事務のおねーさんとの交渉、がんばる!


「こちらラーク13。た、ただいま確認中。現在、低空による警戒任務に切り替えている。竜波の乱反射がひどい」


 竜を見つけるにはドラゴンが発する竜波を拾う。

 しかしこれが地上に乱反射することもある。今、なぜか竜波が乱れているんだ。


 そんな時は低空から上を見上げるように警戒観測を行うこともある。

 これでごまかそう!


「ラーク13。可能な限り前進。敵後方の警戒に当たれ」

「了解」


(マックス様! 残りの兵が逃げ遅れた子供たちを!!)


 命令をする前に、フィーアは超低空で近寄り、着地。

 だが盟約により、ドラゴンは直接人類に歯向かえない。


 俺はしかたなく安物の対人殺傷用通常弾を込め、敵兵に問う。


「王国軍の兵ども。戦場は向こうだ。潔く死んでこい」


 どうも俺と同じく住民を追い払う事を理由に任務放棄をしていたらしい。


「さ、さっきの大爆発はお前か!? なんという火6力」


 王国兵が後ずさる。

 だが一人威勢のいいやつがいる。


「ふんっ! たしかに竜騎兵の魔力は膨大、攻撃力は高い。

 力は正義。正義は力。

 だがな、その竜騎兵を倒したとなれば、この俺様は報奨金で一年は豪勢に暮らせるぜ!」


 あ、それいいな。

 俺も今度、竜騎兵であること隠して竜騎兵狩りしてみるか。


「竜騎兵に勝てるとでも思っているのか? こっちは時間が押しているんだ。早く解放してやれ」

「御免だね。俺は人間をいたぶるのが好きで兵士になったんだ。これから生きたまま両手両足の腱を斬り、動けないようにしてから徐々に苦しめてやるぜ」


 既に子供たちのえり首をつかんで、首に刃を当てる兵士。

 周りの兵士もニヤニヤ笑っている。


「外道が」


 俺は騎兵銃を照準もつけずに発射。この近さなら確実に当たる。


 だが一般兵に見えた奴が、眼にも止まらぬ速さでそれをかわす……だと?


「なに!?」

「帝国軍では手に入らないだろうな。人間の魔力を極限まで高めて戦闘力を増すブースト薬。これがあれば竜騎兵と同じ戦闘力を得られる!」



 奴の速さは異常だ。

 俺は攻撃はおろか、眼で追うのがやっと。

 危険なクスリは体に毒だぞ?


 防御もいくつかミスし血飛沫が飛ぶ。


「ほれほれ、どうした。天下の竜騎兵が一介の軽歩兵に倒される気持ちは。俺がこの世で初のドラゴンスレイヤーとなる!」


 しかし悪いな。既にお前の力は見切った。


「ふふふ。お前の本気、限界はそのくらいか。そんな攻撃が竜騎兵の俺に通じると思うのか? 愚かな」


「なに? このブースターは人間を竜をも凌駕する魔力に満たすのだぞ!」


 俺はフィーアの背から降りる。


「一対一、PvPだ。フィーア。こいつを食べて魔力を送ってくれ」


 既にS定食を全部消費してしまったので、お手製の軽食をフィーアに投げる。

 フィーアは「うまうまですぅ」といつものように、口と鼻から煙をはいて、ほむほむしている。

 S定食より美味しく食べているように見えるのは気のせいか?


「さて、モブ兵士。力くらべと行こうか。かかってこい」

「なにをいいやがる。体中血だらけじゃねぇか」

「お、これは気づかなかった」


 俺は少しだけ魔力を体の表面にまとった。


「これで治った」

「ば、ばかな! あれだけ切り刻んだのに」

「お遊びはおわりだ」

「クソッ!」


 奴の長剣が俺の頭を狙って振り下ろされる。

 俺はわざと頭で受けてやる。

 身体が白銀の光を放つ。


 ごっ!


「ん? ハエでも止まったかな? ではハエたたきと行こうか」

「ひっ。化け物だ」

「しっけいな。竜騎兵ドラグーンだ」


 俺は愛用の騎兵銃の銃剣に魔力を流す。

 三〇センチの銃剣が二メートルに延びる。魔装だ。


 さっきの頭への打撃を消し去ったのも魔装。

 他の竜騎兵にはできない。

 これは『完全に食を断った』俺だけにしかできない。


 腹ペコの勝利だ!


「そろそろお遊びは終わりだ。あの世でせいぜい魔界の住人としていじめられるがいい」


 ばびゅっ


 さらに四メートル以上の長さになった銃剣でその場にいた王国兵の命を狩りとる。


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