第10話②
次の日私は香織ちゃんから提案してもらったように朝からお邪魔させてもらいました。りゅー君の家の前まで来てもインターホンを押す勇気が出ませんでした。そのまま玄関前でウロウロしていると、丁度りゅー君たちのお母さんである
「あら?白亜ちゃん、久しぶり!香織から聞いているわ。ゆっくりしていってね」
「は、はい!敏子さんもお仕事お気をつけて」
「あらあら!やっぱり白亜ちゃんはいい子ね〜。ウチの子たちをよろしくね」
「こ、こちらこそよろしくお願いします」
私は慌てて頭を下げました。すると敏子さんは微笑ましそうに私を見つめて、家の中に上げてくれました。
「あれ?はーねーもう来たの?お兄はまだ寝てると思「うわぁぁ〜!」…って、何!」
「きゃっ!りゅー君!?何があったの?」
私が香織ちゃんと話していると、二階にあるりゅー君の部屋から悲鳴のようなものが聞こえました。私が心配して様子を見に行こうとすると上からりゅー君が降りてきました。
「え?なっ、どうし!」
…私の心配を他所にりゅー君は何もないように歩いてきました。その姿に私は安堵と言葉で言い表せない少しのモヤモヤした気持ちが湧き上がりました。
「あれ?りゅー君おはよう。今日は早いんだね」
「ど、どうしてここに白「ゴホンッ!」……はーちゃんがいるの?」
「…香織ちゃんにご飯一緒でいいって言ってもらえたけど、迷惑だったかな?もしりゅー君がイヤならすぐに帰るよ…」
「イヤじゃないよ!」
「…ホント?私が一緒でもいい?」
「もちろん!」
私は少しいじけたように返してしまいました。……りゅー君と一緒だとどうしても自分を抑えることができません。それでも、私の根幹にある好きって気持ちだけは伝わっていません。…それにはホッとするような、がっかりするような複雑な気分です。それでも、最近の私は気持ちが溢れてしまいそうで困ってしまいます。今以上を望んじゃいけないのに…。
「…じゃ、じゃあ、早速ご飯用意しちゃうね。りゅー君は座って待ってて」
「さすがに悪いよ。せめて何か手伝わせて」
「…そう言ってくれるのは嬉しいけど、今回だけは私1人でやらせて。せっかくの機会だから、りゅー君には私の料理を食べて欲しいの」
「うん、分かったよ。…でも、そんなに気負わなくていいよ」
私は自分の気持ちを抑えるためにも一旦おかってに引っ込むことにしました。そのときにりゅー君も手伝ってくれると言ってくれたけど、今日だけは断らせてもらいました。一番最初に食べてもらう手料理は私だけで作りたかったのです。……それにしても、りゅー君がいるだけで私の心臓は早くなってきました。
『料理をする君は綺麗だよ、マイハニー』
『も、もう!危ないよ、ダーリン。私は火使ってるんだよ!』
『俺たちのラブラブぶりの前にはどんな火力でも儚く見えるな』
『…も〜う。そんなこと言われたら照れちゃうよ〜』
『照れてる君も可愛いよ』
『もう、ダーリンったら』
私は最近多くなってしまったりゅー君との新婚生活を妄想してしまいました。そしてりゅー君の方をチラッと見ると、香織ちゃんと話していました。それから私は無心で朝ご飯を作りました。
「ご飯できたよ〜」
「お、美味しそう」
私がそう言うと目をキラキラさせたりゅー君がやってきました。少し子供っぽい彼に笑みが溢れました。すると、タイミングを見計らったように彼のお腹からグゥ〜と可愛らしい音が聞こえてきました。
「ふふっ。召し上がれ」
「…いただきます。…美味しい…」
「!よ、よかった〜」
私が用意したご飯をりゅー君は美味しそうに食べてくれました。それは不思議な満足感と、ムズムズするような不思議な気持ちが湧き上がってきました。その後で一緒に食べたご飯はいつもの何倍も美味しく感じました。
「そういえば、お兄ははーねーとまたデート行くの?」
「ゴホッ、ゲホッ!きゅ、急に何言ってるの!」
「そ、そうだよ香織ちゃん。デ、デートなんて…」
ご飯を食べ終えると急に香織ちゃんがそんなことを言い出しました。私は顔が真っ赤になったことが分かりました。
「…あ、あのさ。…昨日も結局遊べなかったじゃん。だから、ってわけでもないけど、その……よかったら、今度デ…出かけませんか?」
私が恥ずかしくて俯いているとりゅー君がそんな言葉を投げかけてくれました。すぐに返事をしたかったけど、一つだけ気になることがありました。だから、私はそれを聞くことにしました。そうしないと私は心からデートを楽しめないと思ったからです。
「……ねぇ、一つ聞かせて?どうして誘ってくれたの?香織ちゃんに言われたから?私がデートしたいって言ったから?……それなら、もういいよ」
私は既に昨日のお家デートで満足しています。それなのに、またりゅー君の時間を奪うのは嫌です。それに、私の気持ちが本格的に抑えられなくなりそうで怖いです。せっかく一緒にご飯を食べられるようになって、髪を整えてもらう約束までしたのに、それが台無しになってしまうのは耐えられそうにありません。
「俺はそんなの関係なしに一緒に遊びに行きたいと思ってるよ。…また昔みたいに仲良くなりたい、って」
「…うん、そうだよね。私も一緒に遊びたい」
それでもりゅー君は誘ってくれました。仲良くなりたい、なんて言ってもらえたのに、断ることなんてできません。…それに、私も本音では一緒にデートに行きたかったので、すぐに私は行きたいと返事をしました。
「!じゃ、じゃあ、明日でいい?明後日にする?」
「あ、明日にしよ!…わ、私は先に帰るね」
私たちはそう言って明日またデートする約束をして別れました。私はこの前買えなかった新しい服を急いで買いにいきました。その後のご飯時にはりゅー君の家にお邪魔したので、あまり独りの感じがしませんでした。
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