パンダ、熱循環、カフェ



「痛ってー......あいつらしこたまぶん殴りやがって...アザになっちまってるかもしれねえな...」






◇◇◇





「おーい! お前なにそんな所で黄昏れてんだー? 似合わねーぞ!!」


「ああ、サトシか、俺のことは放っておいてくれ、負けておめおめと逃げ帰って来た奴だ」


「うわ〜!! お前のその目のアザ! パンダみて〜!」


「だからこっち来んなって言ってんだろ! お前の事だからまた変な事言ってくると思ったんだよ!!」


「まあ落ち着けって、てか目だけじゃねえな全身傷だらけじゃねえか」


「全くだ、逃げられたのが奇跡だよ」


「逃げ足だけは一丁前だな!」


「てめえにも同じ傷跡つけてやるよ!! 痛ッ──!!」


「その傷じゃ動くのも辛いだろ、待ってな今俺がコーヒー入れてやるから」


「あれ苦いから嫌いなんだよ」


「知らないのか? コーヒーに入ってるカフェインには鎮痛作用があって、痛み消しになるんだ」


「お前のその無駄知識は一体どこから仕入れてくるんだ...」





「ほらできた、で何があったんだ?」


「別に、袋叩きにあったから死ぬ前に帰ってきた」


「へぇ〜、お前でも負ける事あるんだな」


「別に負けた訳じゃねえよ、向こうの数がほんのちょっぴり俺の想像より多かっただけだ」


「だからいつも言ってるだろ、想定外を想定しろって」


「...サトシの言う通りだ、詰めが甘かったな」


「え、爪噛む系の人だったの? 癖は早めに直した方がいいぞ」


「味の話してねえよ!! この世にいねぇから爪噛んで甘ぇ〜とか言ってる奴! 無味だろ爪とか!」


「それより早くコーヒー飲めよ、冷めちまうぞ」


「冷ましてんだよ、熱すぎて最初は飲む気になれねぇ」


「おいおい、何の為に鎮痛作用があるのか知らないのか? 熱い時に飲んで火傷しても痛まない為なんだぞ?」


「じゃあお前飲んでみろ」


「......」



ゴクッ



「熱ぁぁぁああああああああ!!!!」


「うわっ!汚ねえな!!噴き出すんじゃねえよ!」


「...だってよ...! ジャングズ...! 口が!!」


「訳分かんねぇ事言ってんじゃねぇ!!」


「あ〜熱くて死ぬかと思った」


「立ち直り早すぎるだろ! 怖いわお前!」


「やっぱり砂糖入れるか、もうちょっと甘くした方が飲み安いだろ」


「砂糖? 甘味があるなら始めから出してくれよ」


「悪い悪い、はい爪切り」


「そのネタまた続いてたのかよ!! 甘くねぇって言ってんだろ!!」



「じゃあこれ飲んだら反撃しに行くか!」


「いや今日じゃなくてもいいだろ、つかサトシも着いてくるのか?」


「当たり前だろ、ダチやられてんのに無視する訳にゃいかんだろ」


「...」


「それにお前も知ってるだろ? 俺の能力」


「情熱循環システム...だったよな」


「そうだ、今コーヒーを飲んで体内に湧き上がった情熱、全部ぶつけてやろうぜ!!」


「フ...ああ、そうだな、いっちょやってやるか!」








異世界転移してきたサトシの能力、情熱循環システムは、熱を己のパワーに変えることができる能力である。


二人はコーヒーを飲み干したあと、ダンジョンへと潜っていき、獲物を狩り尽くしたとさ。


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