やや外れかかった頭のネジ

しらべ

ヤブ医者




「うっ...はぁ...はぁ...くそ痛ぇ...まさか左腕を斬られるなんてな...一生の不覚だぜ...だが、幸い傷口がかなり綺麗だ、裏の世界じゃ有名なあの医者に任せれば...きっと元通り動かせるようになるはずだ...!!」






◇◇◇






「やっと着いたぜ...早く診て貰わねぇと...」


「あ!ちょっとちょっと!!」


「うわ!誰だお前!?」


「すみません、もしかして四皇の方ですか?」


「誰がシャンクスだ!確かに左腕ねーけどよ!」


「...でも貴方赤髪ですよね?」


「返り血だわ!つーかあんた誰なんだよ!」


「そういう貴方こそどちら様ですか?うちは紹介がないと診療しない事になっているんですけど」


「紹介状はこれだ...あんたが噂のどんな切り傷でも治せるって噂の名医なのか?」


「ええ、確かに私がこの肛門外科の執刀医です」


「肛門外科!?来る場所間違えちまったじゃねぇか!!」


「まあまあ落ち着いて下さい、それは表の通り名です」


「あ、ああそうか、表でも医者の仕事をやってるんだな」


「裏の名前はどんな切り傷も見逃さない、肛門刑事デカです」


「やっぱり肛門なんじゃねぇか!!くそ時間がねぇってのに......」


「まあ落ち着いて、ちょっとした小粋なジョークですよ」


「上句にしてはだいぶ下品だったけどな...」


「それでは診療の方を始めさせて頂きますね」


「そんな無駄な事やらなくていいから先に腕をくっつけてくれ!」


「あのですねぇ...貴方も裏の住人なら分かるでしょう、医者の言うことは聞く、常識ですよ?」


「裏の人間じゃなくても分かってるわそんな事!ッチ、分かったやるなら早くしてくれ、こっちは痛くてしょうがないんだ」


「ではまず簡単なアンケートから」


「アンケート!?」


「これまでに腕を切り飛ばされた事はありますか?」


「ある訳ねぇだろこれが初めてだ」


「では指を詰めた事は?」


「ない、しくじった事なんかないからな」


「では足を斬られた事は?」


「しつこいな!?そんなに気になる事か?今は足より腕の方が重要だろうが!!」


「え〜では次の質問です」


「まだ続くのかよ!」


「血液型は何型ですか?」


「A型だ」


「アホ型と」


「はっ倒すぞてめぇ!!血液型の話じゃねえのかよ!!」


「ちょっと歯の方見せて貰えます?」


「見せる必要あるのかよ...」


「あ〜だいぶ欠けたり無くなったりしてますね」


「まあこの世界に入ってから顔面殴られる度歯がどっか飛んでいくからな」


「ガタガタと」


「ギタギタにぶちのめしてやろうかてめぇ!!」


「ちなみに今日はどうされたんですか?」


「バカなのかよ!?左腕切り飛ばされてんだよ!!あと聞くのが遅すぎるだろ!」


「ちょっと飛ばされた左腕の方見せていただけます?」


「ああ、これだ...すぐ氷水に浸して持ってきたから状態は悪くないはずだ」


「へぇ〜取れたてほやほやって事ですね」


「不謹慎過ぎるだろ!本人目の前にいるんだぞ!」


「じゃあちょっと袋から取り出しますね...あ〜この傷口なら多分縫合すれば元通り動かせるようになりますよ」


「本当か!?助かったぜ...」


「ええ、傷口があと少し荒れていれば難しかったと思います、じゃあこれはちょっと机に置いて、と」


「おおい!傷口下にして置くな!!今自分で言った言葉も忘れたのか!?」


「うわあ!何だこのマドハンド!?」


「俺の左腕だよ!!」


「うわあ!くさったしたいだ!」


「仲間呼んでねぇよ!!誰がくさったしたいだよ!!」


「あ、びっくりした、リビングデッドだったか」


「色違いじゃねぇか!何が違うんだよ!」


「じゃあこれから手術の方始めていきますね、そちらの方に仰向けで寝てください」


「切り替え早すぎるだろ...さっさとしてくれよ、なんで俺は疲れてるんだよ」


「麻酔はどうされます?今なら30%オフのシーズンですけど」


「オプション制なのか!? 一応聞いておくが値段はどれくらいだ?」


「ああいえ、濃度の話です」


「濃度!? 聞いた事ねえよ濃度30%オフなんて、もうそれでいいよ、麻酔でも何でもいいから早くしてくれ...」


「麻酔希望と、じゃあ目の方開いてくださ〜い」


「目薬!?麻酔って注射とかじゃないのかよ!」


「あ、間違えた、これ水虫用の薬でした」


「なあ、あんた実はやぶ医者だろ?そうなんだろ?」


「まあ麻酔は無しでいくとして、まずは...オス」


「メスだよ!! クソつまんねえボケ挟むな!! あと俺とお前以外誰もいないぞ!?俺に頼んでるのか!?」


「じゃあ切っていきますね〜」


「おおい!そっちは右腕だわ!!何やってんだお前!?」


「え......お揃いにして欲しいんじゃ?」


「んな訳あるかボケ!!髪切るノリで腕切るバカがどこにいるんだよ!!」


「ここに...」


「はっ倒すぞ!!」


「ではまずは神経の方、マチ針で留めていきますね〜」


「留まる訳ねえだろうが!!裁縫じゃねえんだぞ!!」


「注文の多い患者ですね...それじゃそろそろ本気出しますよ」


「さっさとしてくれ...」






◇◇◇





「起きてください、手術は無事成功しましたよ」


「ん...あ、ああそうだ俺は確か腕を斬られて...」


「ええ、どうやら手術の途中で痛みで気絶してしまったようですね、びっくりしてお腹にメスを落としちゃいましたよ、無事縫合したので命に別状はありません」


「医療過誤じゃねぇか!!ま、まあ左腕が治ったなら───」


「もう動かせると思いますよ、これでどんな相手でもイチコロです!」



「な、なんじゃこりゃあ!!こ......コブラのサイコガンじゃねぇか!!」


「ええ、大変でしたよ、移植手術は...私でなければ失敗していたでしょうね」


「おいいい!!!これじゃあ裁縫じゃなくてサイボーグじゃねぇか!!!俺は左腕を元に戻してくれって言ったんだが!?」


「匠の粋な計らいって奴です、安心してくださいオプション料金はサービスしておきましたよ」


「そういう問題じゃねぇぇぇええええ!!」



「あ、これ退院祝いの孫の手です」


「俺の手じゃねえか!!勝手に商品化するな!!」




その後、コブラとなった彼は敵対組織を全て潰し、裏の世界のトップに立ったという───


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