2話・強制転移〈後〉

 目が覚めた時、私たちは石煉瓦と大きな扉でできた部屋に倒れていた、


「唯さん、起きてください」


 唯さんファンクラブの一人であり家族以外に私とまともに話しをしてくれる人である、


 すぐ隣にいた唯さんを起こす、


「んんっ、絢さま……どうしたんですか……?」


 起きたばかりでまだ状況が呑み込めて無い様だ、様呼びなんてものをしている。


「唯さん周りを見てください」


 唯さんは周りを見回してきずいたようだ、


「絢さまどこですか、ここ?」


 寝ぼけていた訳では無い様だ、まださま呼びをしている


「分かりません、とりあえず周りの人を起こしましょう」


 唯さんは次々と人を起こしていく、私はもう一人のまともに話せる人である先生を探す、


 先生はほかの人より数歩奥で倒れていた、こう見るとみんな列で倒れているし教室にいたときの並びのまま倒れているようだ。


「先生、絵里先生起きてください」


「絢さん……どこですか、ここ」


 流石先生だ、すぐにこの訳の分からない状況を理解していた。


「分かりませんが、唯さんがみんなを起こしています、みんなをまとめてくれますか?」


「分かりました、やってみます」


 先生はすぐに生徒をまとめ、人数確認を行った、どうやら全員いるようだ。


 学級委員の二人を集め、話し合いをしている、暫くすると騎士風の人達と、おそらく貴族だろう人物が入ってきた。


「今は何が起こっているのか知りたい方もいらっしゃるでしょう、しかし今は私達についてきてください」


 何か高圧的な嫌な奴に思えるが、今はついていくしかないだろう、私達は先生を先頭に彼らについていくことになった。


◆◇◆◇◆◇◆◇


 謁見の間についたが一見の感想は、成金で悪趣味の愚王といった感じ、とても嫌な感じがする。


「おお、ついに成功したか、それでこの者たちが[呼び出された者]の一団か」


「そうでございます」


私たちを放って盛り上がっている、すると絵里先生が意見をした。


「あの……私たちは何故ここにいるんですか?」


「ああ、すまぬ説明はしておらんかったか、バッソ頼む」


「はい、ではまず私たちはあなた達のように何者かによってこの世界に召喚された者達を[呼び出された者]と呼んでおります。そして今回私達がこの儀式に至った理由は二つある。一つは、今この世界には、かつて神々を滅ぼした魔神を復活させようとする一団がいる事、次に、王国一の占い師がその祖織を止めるためにはあなた達[呼び出された者]の力が必要だと占ったからだ」


 何故だろう、何故かこの状況を何処かで見たことがあるような気がする。


「つまり、俺たちにその悪の組織とやらを止めてほしいってことですか?」


「そうだ、そしてもしその組織が魔神の復活を成功させてしまった場合、その魔神の討伐もしていただきたい」


 やっぱり何処かで、何処かで見たことがあります、そしてそのうち私が追い出されるところまででワンセットな気がするのです、とてもおかしい。


「それを私達がする義理はないのでは?」


 流石副委員長こんな時でも対価を取ろうとするのか、後ろから見ていてもうっすらと微笑みのオーラが見える、でもこちらが交渉権を持っている取引なら王国側はこんな高圧的には来ないだろう。


「確かに今まではその通りだな……だが、もうおぬしらにも関係のない話ではないぞ」


 国王が衝撃の一言を言い放つ、全員は理解したのだろう、さすがに不安が隠せない様だ、先ほどまでの微笑みのオーラが一気に瓦解しているぞ、交渉をするときは感情を隠せ。


「もう予想が出来ているようですが、今の私達では貴方達を基の世界に戻すことはできません、貴方達が死んだ後どうなるかもわかりません、少なくともいえることは貴方達のように過去の[呼び出された者]が死んだとき、この世界に来た時のように転移のようなものは発動せず、死体は残ったままだったという事だけです」


 これで、死んだら戻るということもなくなったな、その上、大罪人ということにして死刑や追放刑にすることもできるのだ。あぁ、めんどくさい。


「だが、貴方達をこの世界の事情に巻き込んでしまったのも事実。貴方達が力をつける為の協力は惜しまないし、衣食住も保証しましょう。魔王の危機が去った際には、その手柄に応じて貴族位を与える事も検討しましょう」


 あぁ、もうこれで私達はこの世界で一生飼い殺しにされることが決定したわけだ。夢もなければ、希望もない。この話を聞いて安堵してるやつもいる。この事情をこの場のどれだけの人間がわかっているのだろうか。


「それでは今から貴方達にはやってもらう事があります」


 その言葉の後入ってきたのはよくファンタジーなどで見る神官の姿をした老人であった。

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