第4話……山賊襲撃! そして結末。

「……では兵士としてご領主さまに同行するものは挙手をせよ!」


村長が兵士希望者を募る。



「俺は行くぞ!」

「僕もだ!」

「俺に任せろ!」


 多くの若者が参陣を表明する。

 彼らはとても勇ましい雰囲気だ。


「えと、えと……」


「小僧は力があるが、今回は留守番だな。もっと大きくなったら参戦してくれ」


 村一番の大男に、肩を叩かれて辞退するように言われた。

 そう、いまの私の姿は、マリーの魔法によって少年に見えているはずなのだ。




☆★☆★☆


(――翌日)


「アナタ~頑張ってね~♪」

「父ちゃん頑張れ!!」


 有志達が装備を整えて村の中を行進。

 そして、村をでて、領主様の屋敷へと向かって歩いていった。



「ガウも行きたかったの?」


「……う、うん? どうかな?」


 皆と戦場に出たいような気持はある。

 一緒の村の仲間だという意識があったのだ。


 ……そう、仲間だという意識。

 人間が仲間……!?

 ……。


「ぽこ~♪」


 少し混乱気味だった私の足に、タヌキのポココが懐いてきた。

 フサフサした毛が、足に心地よい。

 私は考えるのをやめた。




☆★☆★☆


(――二週間後)


――カンカンカン

 夜更けに村の鐘が鳴る。



「ガウ、なんなのかしら?」

「ぽこ」


 マリーとポココが不安そうだ。



「た、たぶん、山賊じゃ、じゃないかな?」


「ちょ、ちょっと、行ってくるね」


 弓と、以前ゴブリンから奪った宝剣を手にする。

 準備をして、丸太小屋から出ようとすると、



「留守番も怖いから、私も行くわ!」

「ぽこ~」


 彼女は一応魔法が使える。

 村の若い人たちが兵隊に行っている間は、彼女も貴重な戦力だった。


 3人で村の中心に向かうと、皆あつまっていた。

 若い衆が兵隊に行っているので、老人や子供も混ざる。



「敵は山賊の様じゃ、みな団結して村を守ってくれ!」


「おう」

「まかせてくれ」


 村人の士気は高かった。

 しかし、相手は村の若い衆がいない間を、わざと狙ってきているはずだった。

 油断は禁物だった。



「ガウたちは高い所から弓で頼む!」


「あ……はい!」


 私はマリーと村の櫓にのぼる。

 松明の灯から、敵の数を割り出す。


 ……1、2、3……50以上だと!?

 さらに敵は増える。



「こんなの勝てるの?」


 マリーが不安そうだ。

 だが、こういう時にかける言葉は決まっている。



「……か、必ず勝てる!」


 そう嘯いた。

 私は歴戦の兵士ではないし、判断などつきはしなかったのだが。



 敵が歩行から、駆け足になり剣を抜く。



「かかれぇ! あの村に若い奴はいねぇぞ!」

「「「おう」」」


 掛け声ともに、敵は次々に殺到してくる。



――ビシッ


「うが!」


 櫓から矢を撃ちおろす。

 狩りで鍛えているので、この少年の姿でも十分敵を葬れた。


――ビシッ

――ビシッ


 立て続けに首を狙い、敵を3人葬る。



「あの櫓の上に射手がいるぞ、弓で狙え!」


 敵の射手がコチラを狙ってくる。

 悪いがコチラは闇夜で目が利く魔族だ。

 人間どもに遅れは取らぬ。


――ビシッ

――ビシッ


 片っ端から相手の射手を仕留めた。



「はい、どうぞ!」

「ありがとう」


 マリーから素早く矢を受け取る。

 相手は暗闇でこちらの姿ははっきり見えないが、こちらからははっきり見えた。



――ビシッ

――ビシッ


 一方的に相手を撃ち減らしていると、



「……きゃあああ」


 後方から火の手があがる。

 敵は反対方向からも攻めて来ていたのだ。

 ……まずい、あちら側には誰も守備要員がいない。


 急いで対応しないと、村人がさらわれる恐れがあった。



「ガウどうしよう?」


 マリーが心配そうな顔をする。

 刹那、私は櫓を飛び降りた。



「ガオオォォォオオ!」


 そして幻惑魔法を解く。

 完全に魔族であるサイクロプスの姿になった。



「ぎゃぁぁ!?」

「魔物が出たぞ!」


 敵だけでなく、味方にも騒がれる。

 それを気にせず、5倍にもなった身体能力をつかって、村の反対方向へ疾風のようにはしった。



「……おら! さっさと歩け!」


 やはり村人がさらわれようとしていた。

 娘や子供たちが捕まっている。

 賊にとって人間は、貴重な戦利品だった。



「ガォォオオオオ!」


「げぇ!? 魔物!? お助け」


 お楽しみの略奪の最中に、魔物のサイクロプスが現れたのだ。

 賊は腰を抜かして、地面に転んだ。


 ……賊!?

 違うぞ。


 山賊だとおもっていた相手は、奇麗な鎖帷子をまとった正規兵だった。

 多分、山賊と連合して攻め込んできた敵兵士なのだ。



――ガシュ

――ガシュ


 宝剣と爪で敵をなぎ倒す。

 なまくらになった剣をすて、敵の剣や槍を奪って、さらに敵に襲い掛かった。



「何を怯んでおるか!?」

「掛かれ!」


 ……ん!?

 近くで、馬上で指揮をする者が見えた。


 多分、指揮官だ。

 素早く忍び寄り、身柄を抑えた。



「ガオォォオオオ!」


 指揮官の頭を殺さぬように鷲掴みにする。

 そして少し持ち上げた。



「や、やめてくれぇぇ……」


 敵の指揮官が悲鳴を上げる。



「お前たち、おとなしく撤収しないと親玉の命はないぞ!」


 マリーに代わりに発言してもらった。



「お前たち! 退くのだ! 退け!」


 私の掌中にある敵指揮官が、怯えながら退却命令を出す。

 ……そうすると、敵は潮が引く様に撤退していった。




☆★☆★☆


(――次の朝)


 敵指揮官の身柄を、村長に引き渡す。



「残念じゃがな、わが村には魔物はおけぬ!」


「そんな!」


 村長に言われ、マリーが驚く。



「少ないがこれをもって出ていってくれ!」


 私達は、幾ばくかの金貨を報奨金として貰って、マーズ村を出ていくことになった。



 ……所詮人間なんて、こんなもんだよな。

 私はそう思った。

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