第13話

「そういや、この船は全部金属製なのか?」

ふと気づいたようにドレッドが言った。

「ほぼそうだよ、というより今はほぼ全ての船が金属製だよ。そっか、金属製の船も初めてか」

ベッセラーが簡単に答える。

続けて

「例えば甲板の部分は木造だね。これは乗員の快適性のために木造なんだ。騒音防止なのと転倒防止のためだと思うよ。金属より木材の方が音を吸収できるんだ」

この旅客船、エンチャンテッド・ジャーニー号(錨の横の船体に表記されていた)は白い船体に一部金色の装飾が施され、軽快なデザインが特徴であり、甲板は綺麗に掃除がなされていてそこからの景色は素晴らしいものがあった。

ちなみに、ベッセラー曰くこの船は5000トンほどで小型から中型の範囲に入るそうだ。

ドレッドからしたら5000トンはとても大きく感じられた。

どうしてこうも高級そうな内装をしているのかとベッセラーに聞くと、船での移動は長旅になるからその分快適にしないと不満が溜まるからだそうだ。


船が港を離れてから2週間が経過した。

ドレッドとメモンは船の行けるところ全てを探索した。

客室、船員室、操舵室(ブリッジ)、船の両側に行き来できることからブリッジと呼ばれてるそうだ。甲板、機関室、病室、錨鎖庫、発電室、船長室まで。

機関室では石炭をごうごうと燃え盛るボイラーの中へ投げ込んで船を動かしていた。

錨鎖室にはとてもおおきな鎖が大量に繋がってその先にはこれまた大きな錨があった。

二人は船の行けるところ全てを探索したため暇になってしまった。

問題は突如そこで発生した。

3階層にある第二休憩室で盗みが発生したのだ。

そこにはドレッドとメモン、そして赤毛の女がおり、ドレッドとメモンからしてみれば赤毛の女が犯人なのは明白だった。

予想通りこの問題はすぐに解決されることになった。

一時は、メモンが獣人であるが故に犯人だろうと責められたが、ドレッドとメモンが協力して赤毛の女を問い詰め自白させ解放された。

このとき、二人はベッセラーにも協力を求めたが、ベッセラーは曖昧な答えを返した、ドレッドはベッセラーが少し差別意識があるのではと考えることになった。

また、犯人を自白させた時、なぜやったのかも知ることができた。それは貧困が原因だったが、なぜ貧困なのか聞くと、なんと戦争が原因だと言うのだ。

その赤毛の女は貿易業を生業としており、戦争の影響で貿易が芳しくなく貧しくなったとも。

二人は(後に聞くとベッセラーも知らなかった)戦争なんて起きてることを知らなかった。

しかも、戦争をしているのは目的地であるセクザン帝国と大テリブン王国らしいのだ。



しかしまずは、

「ベッセラーさん、獣人だからって差別意識持つのはあまり良くないぜ」

「いや、なんというかさ、学校や教会では獣人は悪として教えられたからなぁ、体に染み付いてるんだ」

「じゃ、メモンにあれ頼んでみるか」

「あれって?」

「じきにわかるさ」



「うおおおおおおおおお!」

ベッセラーは空を飛んでいた。どんどんと雲に近づき雲が大きく見えてくる。風は強く吹きつけ痛みまで生じさせる。

「め、メモン君はすごいな」

「そう?空飛べる獣人なら普通だよー」

ドレッドはメモンに頼みベッセラーを空の旅へと連れ去ってもらった。

ベッセラーが差別意識を持っているのはそう教えられたからで、実際に触れ合えば差別意識は消えるかもしれないとドレッドは考えたのだ。


「……すごい空の旅だった。すまなかったな、窃盗の事件の時力を貸さないでしまって、あれは俺の失敗だ。これからは差別意識を持たないようにするよ」

「わかってくれてうれしいよ」

と、ドレッド。

「それはそうと、目的地のセクザン帝国と大テリブン王国が戦争をしてるらしくこの船は行けるのだろうか……」

「さっき知ったよ。まさか戦争しているとは思わなかった……いければいいんだがなぁ」

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