第39話 皆入院した日

 彼女を見て驚いたが、おやじである王は、ささ、どうぞと言う感じで、にこにこ顔だ。

 当然宰相も。


 少し離れたところに居た、まことがやって来る。



 まっまた一人増えた。でも、きっと一番は私よね。

 一番年上だし、親公認の婚約者? だし。

「お姫様。私はまことと言います。真司さんの婚約者よ」

 そう言うと、一瞬彼女は驚き礼を取る。

「初めまして、まこと様。シウダー王国第3王女ブリジッタと申します。魔王様の所へ婚儀を前提でお世話になります。よろしくお願いいたします」

 そこへ、ずいっと割り込みシャジャラが顔を出す。

「私は、魔王様の重鎮であり、妻でもある」

 そのセリフに俺が慌てる。

「ちょっと待て、妻にした記憶はないぞ」

「何をおっしゃいます。この前一緒に寝たではありませんか」

 思い出す。

 そう言えば、ゲームをしていて一緒に寝落ちをしたな。


「あれは違うだろう」

「魔王国では、一緒に寝れば番とみなされます」

「なら私も妻だわ」

 周りがワイのワイの言いだす。

「あーまあここで言い合う内容じゃない。帰ってからゆっくり話そう」

 俺がそう言うとその場は収まったが、ブリジッタは俺のほほにチュッとキスをして、王のもとへ走っていく。



「お父様、お話を聞いた時には、いまいち納得できませんでしたが、私本気になりますわ。かならず落として見せますわ」

「おう。そうか」

 そう言って王は目を細めて、ブリジッタの頭をなでる。



 そこから、実際領土の割譲と、国相互での救援、支援その他の条項が確認されてあっと今に、調印が終了した。


 宴を開こうと言われたが、ここの料理レベルは知っている。

 塩焼きと、塩ゆでだ。

 見た目が変わってもすべて同じ。


 急ぐからと、言って丁重に断り、宴は共和国を何とかしてからと言うことにした。

 大臣たちは受けるつもりでいたようだが、きっとこちらの常識を知らないのだろう。

 きっと自分用の食事ナイフは持ち歩いてはいまい。


 テーブルの上に木の板を敷き。

 直置きの料理。

 それを、1本のナイフでそぎながら手で喰う。

 スープをすくうのは、スプーンではなくパンだ。

 さらに、晩餐会なら準備だけでも相当かかる。

 初期に集められた食材は、絶対傷んでいるが、ここの人たちにおいや味が少々おかしくても平気で喰うんだよ。

 日本人が夢見るような晩餐会とは程遠い。

 ブリジッタを通して、ことあることに、教育をしよう。


 そうだな、まずは電気と、冷蔵庫を輸出しよう。

 貨幣は、金銀銅だからグラムいくらのレートで良いか。

 まあ魔王国も同じだし。

 うちは、錬金術でいくらでも作れるのは内緒だ。


 あとは畜産をさせよう。

 しなければいけないことが、どんどん増える。


 まあ、そんなことは良い。

 旧ペルディーダ伯爵領と、パトリツィオ伯爵領は俺のものになった。

 まずはそこからだ、すぐに布告を出して、日本のものを使い知識チートで領内を変える。

 魔王の出現を待つことなく、狭間の谷を調査しよう。

 居なければいないで安心だしな。


 あとは、勝手に増えていく嫁候補。

 少し前の自分では絶対信じられないだろう。

 リアルハーレムだよ。

 奥さん同士の仲裁で、精神的に死ねる未来が俺には見えるぞ。

 ラノベの主人公たち、どんな思考回路と精神力を持っているんだよ。

 ああそうか、だから勇者か。

 納得だ。



 その日日本へ帰り、大臣たちとの別れ際。

 シウダー王国の常識を、知っている限り書いて渡した。

 

 情報源はフィオリーナ。

 彼女たちも最初、手づかみだった。

 そのため、熱々の料理は食えなかった。


 そんなこともあり、メイドさん達の家に居たくない発言だ。


 さて今回増えた、ブリジッタ家へ帰ると。

 ヘリでいい加減ぐったりして、さらに車で驚き。

 マンションの建物に圧倒され、エレベーターでパニック。

 頭にクエスチョンマークを10っ個くらい並べて家に到着。


 速攻でフィオリーナ達につかまり、かたっ苦しい分厚いドレスを脱がされ、風呂場へ放り込まれて、洗われた後、こちらの服に着替えさせられる。

 

 彼女、この年で化粧をしていたが、おしろいを使っていた。

 何かで読んだ情報が気になり、前にフィオリーナの持っていたものを成分分析をすると鉛ががっつり入っていた。

 その記憶がある為、家に帰ったら洗うことをお願いしていた。


 さてその前に、ヘリが基地に到着後、緊急でカリストを病院へ放り込み、大臣たちをそそのかして、地球人との差異が無いかを徹底的に検査してくれとお願いしてある。

 

 だが、それのおかげで、一度全員入院することになった。

 カリストから寄生虫が見つかったのだ。

 浄化では、寄生虫はだめのようだ。

 怪我に付着する微生物は、滅菌できているようなのに不思議だ。


 しかし寄生虫ねえ。ああ。考えればそうだよな。

 帰って来てから、目の前の町を眺める。

 浅い井戸、適当に処理される糞尿。

 未舗装で、土埃の舞う道端で売られる肉や野菜。



 俺と、まことはすぐに退院できた。

 ただ、おれはHbA1Cが高いから、糖尿病にならないように食事を気を付けるように怒られた。

 一度意識して、治療をしてみよう。

 膵臓にあるランゲルハンス島の活性を上げればいいのか?


 その日、寄生虫のことで、まことのお母さんに相談して、スチームクリーナーを買い込む。2軒とも部屋の徹底消毒と洗濯をして、疲れ果てることになった。


 疲れたので、今日は外へ出ていっしょに食事をしようとなった。

 そして、なぜかいま、お母さんと差し向かいで飲んでいる。


「諏訪さん。うちも旦那がたぶん亡くなっているのか、ほかの世界で頑張っているだろうけれど。まことのことお願いしますね。諏訪さん、ちょっと目を離すとお嫁さんの候補が増えているみたいだから、心配になってね」

「ああまあ。本意ではないんですけどね。気が付けば都合のいいように事態が転がっちゃって。神様でもいて俺で遊んでいる気がするんですよね」

 そう言ってから、あの日の事をちょっと思い出した。

 まこととの数日も。

 まことが来てくれなかったら、俺は俺で闇に沈んでいたよな。

 それこそ、力を持ち自暴自棄になって暴れまわる。

 ……魔王様だ。


「それじゃあ、私は家に帰って寝るわ」

 そう言ってお母さんは手を振って帰っていく。

 まことは風呂場で、いつもの歌っている。

 いまだに何の曲かわからない。

「たくさん曲を知っているんだなと言うと、いつも同じ歌なのに」

 そんなことを言って怒られた。

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