第20話 他の世界 センダスサテラ

 あの日邂逅した3つのうち、センダスサテラ側。

 こちらは、人類だが魔法が使える。

 工業的な物は魔道具の存在。

 そして、文化レベルは、14世紀レベル。

 スサーテラと言われる女神が信仰される。

 


 軽い地震と共に、古びた町や森が出現した。

 そんな報告がワシントンへとやって来た。

 だが衛星は、すべてノーシグナル。

 情報から推測される状況では、自分たちがこっちへ来たのだと証明している。

 シンクタンクよりリポートが来た。


 調査隊の派遣と、人工衛星の打ち上げ。

 資源調査を早急に行わせ、さらに通信網の修復を急がせた。

 ヘリによる哨戒と、U-2さらにはRQ-4 グローバルホークまで投入して、一気に現在の情報を集めることに努めた。



 ひた走る軍用の車両3台。

「調査ポイントは、この辺りだよな?」

「元のマップによると、この辺りだよ。中世の町。それも城郭のヨーロッパ風だってよ。ただ近くにあの森がある」

「ああ魔女の森か。あんなものがポコポコ出来ちゃあ、たまらんなあ。あっ無線が来たぞ」

〈こちらアルファ10。どうした?オーバア〉

〈こちらアルファ2。人が襲われています。救出しましょう。オーバア〉

〈積極的なんて、珍しいな〉

〈軍曹、馬に乗った美人が3人もいるんです。馬車の中は見えませんが、きっとお姫様が居ますよ〉

〈よし。助けて仲良くなれ。命令だ俺たちも急行する。アウト〉


「女だあー、行けー」

 L-ATV(軍用の4輪駆動車)3台が一気に加速する。



 岩の手前にポツンとカワサキM1030B1/M1(軍用偵察用バイク)が停車しているのを見つける。

「どうした? 助けに行ったんじゃないのか?」

「いや、それが見てくださいよ」

 双眼鏡を、渡してくる。


 馬車と周りにいる馬。馬上には騎士風の鎧を装備した金髪美人。

 相対するは、蜘蛛なのか人なのかわからないが、下半身は蜘蛛だ。だが上半身は胸が揺れている美人。ただし、白目で怖い。それが、5体。

 蜘蛛の部分にも口が開いている。

 上半身は、デコイか?


「どっちも美人だな。片方は仲良くはしたくないが」

「問題は、その間に立っている、杖を持った爺さんですよ」

「そんなの居たか?」

 双眼鏡をもってきょろきょろする。


 すると胸までひげを生やした男が杖を構えている。

 着ているローブが土色なので、バックの土と同化して見にくい。

「あーん? 俺この人知っているぞ、確か死んだはずだけどなあ」

「やっぱりそう思います?」

「イギリスの魔法学校。あそこの校長だろ」

「そうですよね。それがすごいんです。手前に黒い塊があるでしょう。あれモンスターが燃えた跡です」

 視野をずらす。

 なにかが燃え尽き、まだ煙が上がっている。

「ああ、あれか」

「雷がいきなり落ちたんですよ」


 双眼鏡から目を離し、兵に聞く。

「雷?」

「ええ。あの杖から出るんですよ。ガガーンて」

「そりゃすごい。本物のダンブ〇ドア先生だ。サイン貰おう」

 そう言ってはしゃぐ、軍曹。


「それでどうします。行きますか」

「どうするかな? 2台バックアップ。俺たちがやられたら逃げろ」

 そう言って、静かにL-ATVを走らせ始めた。

 この、L-ATVは装備として、RCWSリモートタイプの機関砲が搭載されている。

 もう一台には機関銃が装備となっている。

 もう一台には自動擲弾発射機つまりグレネードタイプ。

 

 つまり、あの蜘蛛を見たとき、機関銃では効かないだろうと判断した。

 これは、前回の戦闘経験からの判断である。

 軍曹実は前回の戦闘で、魔女の森と呼ばれる事になった森で、オーガと戦闘している。

 その時には、間近でも小銃では役に立たなかった。


 その後、魔女と呼ばれる原因となった不気味な女が出てきて、蹴散らされて帰って来た。

 この女はのちに、魔王の手下で4天王と呼ばれる役職の一人だと判明した。

 強力な氷系と水系の魔法を使い、何もかも切断または、凍らせて粉砕する。

 そんな記憶。


 その時の経験から下した判断であり、優先的に女の子と仲良くなるためではない。

 決して。



 魔法使いのじいさんと、蜘蛛の化け物は対峙しているが、徐々に周囲から距離を詰められてやばそうになっている。

「よーっし。今だ。白馬の王子様作戦発動」

 そう言うと、目標をセットして、機銃掃射(きじゅうそうしゃ)が始まる。

 意外と効き目があるようで、こちらに向けて4匹がやって来始めた。

「行け―。ガンガン行こうぜ!!」


 爺さんは驚いたようだが、味方だと判断してくれたようだ。杖の構えを解いて見始めた。残り1匹は動かないが、やって来た変な物に魔法を撃つようだ。


 近づいて来た4匹は、蜘蛛本体。

 さらに上部の胸や頭を破壊されて、動きが止まった。

 一安心した兵たちだが、その時後方から、火の玉が降ってき始めた。

 スラロームしながらも、機銃掃射が続く。


 やがて、魔法の停止と共に奥の1匹も動きを止めた。

 L-ATVを停車させて、魔法使いのじいさんの方へと軍曹は歩いて行く。

 一応、機関砲は爺さんをポイントしてある。

 

 歩きながら、連中のあいさつは何だろう? と考える。

 ハグとかキスかな? 爺さんとはいやだな。

 そんな事を考えながら近くに行くと、手を差し伸べてきた。

 良かった。握手だ。

 そう思いながら、手を取る。


 お互いに、言葉は分からないが、敵対しなくていいようだ。


 こんな光景は、今後この星のいたるところで見られ、手を取りながら魔王軍との長い戦闘へと繋がっていく。


 爺さんの持っていた杖が魔道具であり、魔法が使える。

 だが使用者の精神力?が消費されるため連発はできない様だ。

 それはのちに解析されて、強力な武器へと発展する事になった。


 

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