第9話

彩葉の葬式に俺はひたすら泣いていた。俺たちは家族で参列した。俺はひたすら泣いていた。

お経が終わり、みんなが彩葉に線香をたいていく。しばらくするとそこに残っていたのは俺と父さんと彩葉の父さんだった。父さんはなにも言わずに俺の傍にいてくれた。

「智。泣け。大好きな人だったんだろ?」

「う……うん……!!」

「お前は世間には不良とか言われてるけどな、お前は人を愛せる人だ。だからお前は良い奴だ。」

「と……父さん……」

俺は涙が止まらなかった。父さんも昔父さんの母さんがはやくに亡くなって1人で兄弟を養った。それに悲しみがよく分かる人だった。

「智の愛した人に直接会えなかったけど、お前が俺に話してくれたときすごくうれかった。それが観えなくても……」

父さんは俺の頭を撫でてくれた。少し経ったあと彩葉の父さんは俺たちの前に立ち

「これ……彩葉の日記と彩葉の母さんの誕生日を迎える度のバースデーレターだ。」

開くとそこには彩葉がいたという証拠があった。俺が怖いだとか、優しいだとか、かっこいいとか……くだらないことも書いてあって俺は自然と口元がゆるんだ。そして日記の隅に俺と彩葉の名前が相合傘にあった。彩葉は俺にとって「私の未来を見つけるきっかけになってくれた大事な人。見た目はヤンキーだけど頭もいいし、運動もできて優しい。だけど音楽と美術は苦手で毎回私が教えることになる。だけどそんな時間が幸せ。」

とその文の次のページには鉛筆で描いた俺が笑ってる顔だった。

「彼女の目からお前がこんな風に映っていたんだな。」

と父さんは潤んだ目でこちらを見ながら微笑んだ。描かれている俺は幸せそうに笑っていた。だけど俺は守れなかったことが悔しかった。



















「ぐは!!」

「あ?まだまだこれからだろ?」

俺はあの日以来彩葉を傷つけた女、男に容赦なく喧嘩をふっかけたり、社会的に抹殺した。俺は許せなかったし、悔しかった。近所からも喧嘩さえなければいい子なのにと言われた。だけどいい子だからって大切な人を守れるとはかぎらない。俺はあの日から大きく変わってしまった。















「智……!!大丈夫!?」

と家に帰ると姉ちゃんが俺を心配して駆け寄ってきた。だけど俺は姉ちゃんに話してしまうと、姉ちゃんを道連れにしてしまうかもしれないと思い無言を貫き洗面所で血を洗い流す。この世に俺のことを分かってくれるやつなんかいない。

















二年後

俺は担任に呼ばれ応接室と向かった。するとそこには40代くらいのおじさんと担任がいた。俺はソファにどっかと座り偉そうな態度をしていた。するとおじさんのほうが口を開き













「よかったらウチの高校へきてくれ。公立だし、君は頭も良く、運動もできる。ぜひバスケ部へ入ってほしい。」

その真面目な眼差しをした大人をいつ見ただろう

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