第7話

「ん……あれ?」

俺は気づくと病院にいた。ふと目を下に向けるとそこには柊がいた。俺は柊の長い前髪を少し横に分けると今まで近づいて見えなかった顔があった。目のクマが少しあるが、まつ毛が長く、肌は透き通っていた。

「ん、あ!蓬莱くん起きた!!」

と柊は飛び起きた。その拍子に俺と柊は頭をぶつける。

「いてぇ……」

「あ、ご、ごめんね?」

「いいよ」

あのあと俺は倒れてそのまま柊が助けを呼んでくれて保健室に運んでくれたらしい。だけど意識が戻らないからそのまま病院まで連れてきてくれたらしい。

「智!!」

駆けつけてきたのは姉ちゃんだった。

「もう……目覚めてくれてよかった……」

と泣きながら言った。俺のことこうやって大事に思ってくれるのが嬉しかった。

「ごめんなぁ、姉ちゃん。」

俺は姉ちゃんをぎゅっと抱きしめた。姉ちゃんは顔を上げると

「柊さんが全て手配してくれたのよ。ちなみに柊さんはこの病院の院長の娘さんなのよ。」

「え……えぇ!?」

俺はびっくりした。まさか柊の親がそんな存在だったなんて!でもたしかに俺と柊が出会った時柊が持っていた本は全て医学に関することだった。

「それとね、蓬莱くん。よく聞いて。」

と柊が真面目な顔をして俺の目を見つめる。

「蓬莱くん、髄膜炎菌にかかってるの。」

「は?」

柊からはとんでもないパワーワードが出た。なんだよ?それ。

「ここ最近予防接種とかしなかった?」

と言われたとき俺はたしかにその行為に見覚えがある。

「やっぱり……多分医者が集団予防接種のときにその注射針を変えないで1本で多くの人へ接種したからきっと蓬莱くんの場合菌が当たったのかも……」

柊が言うことに俺はただ聞き流すことしかできなかった。俺の時代は注射針を変えないことなんか当たり前だった。だから俺が感染するなんて思わなかった。すると俺のベッド近くのカーテンからまた誰か入ってきた。するとそこには40代くらいの男の人がいた。

「目が覚めてよかったよ。君が蓬莱くんだね?」

と柊に少し似た男の人だった。ネームプレートを見るとそこには柊 淳介ひいらぎ じゅんすけと書かれていた。となるとこの人は……

「いつも娘が世話になっているね。」

ヒットだ。そのあと俺は柊の父さんから病気の説明やしばらく入院すること、そしてクスリや病院での過ごし方を聞いた。姉ちゃんはそのあと俺の荷物を取りに行くと言い帰った。そして俺の身の回りのことは柊がしてくれることになった。俺の場合悪化するともう二度と歩けない可能性があるから大事にしたほうがいいと言われた。最初は柊なんかができるのかと疑ったが、柊はなんでもテキパキこなしていく。そして気遣いもできるし、なにより温かい心の持ち主だった。その日の夜俺は柊に質問した。

「柊はなんでいつも前髪で目を隠すの?」

柊はとても綺麗な顔をしていて、めちゃくちゃモテる。

「女の子たちから目障りだって言われて……」

俺はその女をぶん殴りたい気分だった。柊に嫉妬しているだけだろう。

「柊の目は綺麗だよ。だから……」

俺は柊の前髪をあげ可愛らしく桜のピンで前髪を止めた。

「これからはこれ使って明るい太陽の元でニコニコ笑ってなよ」

これはたまたま達也の母さんからもらったのだが、俺がつけるわけにもいかないし、姉ちゃんは使わないから……

「ありがとう!蓬莱くん!」

柊は少し顔が赤くなって照れ笑いをした。その日から柊は俺に敬語を使わなくなった。その笑顔は月の光に照らされてとても美しく見えた。
















次の日

「んー!やっぱり外は気持ちいいな!」

「もう!ちょっとだけだよ?」

柊にワガママ言って外に出してもらうと外の爽快感や桜景色が綺麗だった。

「あ、俺のあげたピン使ってくれてるんだ?」 と俺は車椅子に乗っていて上を見上げると柊は

「うん!」

と明るく言った。

















「智!!」

と俺を呼ぶ声のほうに振り向くとそこには母さんがいた。

「ごめん、母さん。世話かけちまって……」

と言うと次の瞬間思いもよらない言葉が






「たかが菌に感染しただけでしょ!?帰るわよ!!あんたなんか軽症なんだから!!」

と俺の頬を叩き怒りに満ち溢れている母さんがいた。

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