第5話 慢性炎症性脱髄性性性性性性性
「キラキラちゃん~~神経内科の病名が覚えられないよぉ~~」
「よしよし、また今度勉強会で教えてあげるからね。ところで医クラちゃんは神経内科のどこが苦手なの?」
ある日の昼休み、CBTに向けた勉強が捗っていない医クラちゃんはこういう時の常としてキラキラちゃんに泣きついていました。キラキラちゃんは今更言うまでもなく意識高い系ですが人に勉強を教えるのは得意なのでこういう状況では頼りになります。
「CBTの予想問題解いててこれギランバレーだって思ったら慢性炎症性脱髄性多発神経炎って解説に書いててこんな病名見たことないよって思ったの。大体いくつ性付けりゃ気が済む訳!? 貴様許さんぞ!!」
「ああー、確かに神経内科って結構病名が分かりづらいよね。GBSとCIDPの他にフィッシャー症候群っていう類似疾患もあるんだって」
「だからそういう略語使われると余計分かんないんだってばぁー!!」
医クラちゃんは脳みそが若干文系なので横文字の略語は昔から苦手で、初回講義から「AR」とか「MS」といった略語が頻発していた循環器の試験で再試にかかったのが今でもトラウマになっています。
「キラキラちゃん、それに医クラちゃん、その程度の考え方では国際化社会を生きる医学生として不十分よ!」
「あ、ヨンテンちゃん」
昼休みにいちゃついている医クラちゃんとキラキラちゃんに上から目線で話しかけてきたのは同級生のヨンテンちゃんでした。ヨンテンちゃんはこの辺でとても有名な中高一貫の女子校である
ヨンテンちゃんは同じく意識が高いという点でキラキラちゃんを、顔面偏差値が比較的近いという点で医クラちゃんを友達だと思っています。ただし医クラちゃんは2年生になって初めてヨンテンちゃんとまともに話した際、1年生の終わりにこの辺で有名な公立大学の医学部医学科を仮面浪人で再受験して失敗したと聞かされて以来こんなふざけた女子医学生はとっとと留年して自主退学しろとしか思っていません。とはいえ表向きは誰とでも仲良しを装うのが医クラの処世術です。
「慢性炎症性脱髄性多発神経炎って日本語で考えたら覚えにくいけど、せっかくCIDPっていう略語があるんだからクロニック・インフラマトリー・デミエリネイティング・ポリニューロパチーと英語で覚えれば暗記しやすいし英語の勉強にもなって一石二鳥よ! 私はこうやってUSMLEに向けて普段から勉強しているのよ」
「へえー、確かに日本語で覚えにくい病名を英語で覚えるっていうのはありかも。今度から試してみるね」
ヨンテンちゃんはマウントを取りながら勉強法をアドバイスすると上機嫌で去っていきました。彼女は地の文で具体的に書くとポリコレされそうな事情から外国人男性と結婚したいらしく、アメリカの医師国家試験の一つであるUSMLEを受験すると2年生の時から公言していますが未だに受ける気配がありません。
医クラちゃんはぶっちゃけヨンテンちゃんが苦手(オブラートに包んだ表現)ですが価値のあるアドバイスは誰からでも受け入れる性格なので早速病名を英語でも覚えてみることにしました。
>クエスチョン・ストックCBT アレルギー・免疫・膠原病
>予想問題14.
>次のうち小型血管炎でないのはどれか。
>a.顕微鏡的多発血管炎
>b.結節性多発動脈炎
>c.多発血管炎性肉芽腫症
>d.好酸球性多発血管炎性肉芽腫症
>e.抗糸球体基底膜抗体病
「英語で書けボケェ!!」
「医クラちゃん、問題集解きながら怒らなくても……」
医学の勉強では結局は日本語で覚えることも要求されます。
(つづく)
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