第3話 えいごが・すごく・しゃべれそう

「医クラちゃん、この前オススメしたアメリカのドラマってもう見た?」

「うん、今第2シーズンに入ったとこ。吹き替えの声優さんがイメージにピッタリで感動したかな」


 ある日の昼休み、医クラちゃんは例によってハイテンションな女子医学生のキラキラちゃんに話しかけられていました。


「えーっ、医クラちゃんって海外ドラマ吹き替えで見ちゃう人? それならせめて英語字幕で見れば英会話の勉強になるよ!」

「確かにそれよさそうだね。今度やってみようかな」


 いちいち意識の高いキラキラちゃんにカチンと来つつも医クラちゃんは無難に答えました。キラキラちゃんはボランティア部を含めて5つの文化部を兼部しており、その中の1つにESSも入っています。


 ESS部員というだけあってキラキラちゃんは英語がすごく喋れそうですが、大学に入学してから授業以外で英語を勉強したことがない医クラちゃんは大学で受けさせられたTOEFLで学年4位だったので彼らを内心信用していません。この学年には何とESS部員が7人もいるのです。不思議ですね。


「これからの時代はお医者さんも英会話ぐらいできなくちゃ! 英語の論文が読めるだけじゃ国際化社会に太刀打ちできないし、医クラちゃんも今度英会話の勉強会に参加してみない?」


 医クラちゃんはこのくだらない会話をそろそろ打ち切ってツイッターで低学年の医学生の炎上でもウォッチしたいので、話を適当に切り上げることにしました。


「うーん、私も英会話は勉強したいけど、必要に迫られないと結局は身につかないかなって。英会話っていっても将来ドイツとかフランスに留学するかも知れないし、その頃には翻訳機も発達してるでしょ? ほら、今の時点でDeepLみたいなのあるし」

「DeepLってなに?」

「おのれは英語の論文馬鹿にできた立場かあっ!?」


 当たり前のように尋ねたキラキラちゃんに、医クラちゃんは英会話なんて死んでも勉強しないと誓いました。



 (つづく)

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