医クラちゃんドロップアウト

輪島ライ

第1話 医クラちゃんとキラキラちゃん

「医クラちゃん! 来週の土曜日にコーシー先輩のオンライン講演会があるんだけど、参加してくれない?」

「うーん、土曜日は映画を見に行きたいからちょっと……」


 ある日の放課後、医クラちゃんが退屈のキワミ感のある講義を終えてさっさと帰ろうとしていると、同じく医学部医学科4年生でボランティア部に所属しているキラキラちゃんが話しかけてきました。


「だってあのコーシー先輩だよ? 在学中から起業して今やIT企業の新鋭社長で、そんな人の講演会に参加できるなんてすごくない?」

「まあ確かにすごいよねー……」


 キラキラちゃんは5年ほど前にこの大学を卒業して会社を経営しているコーシー先輩の話で興奮していますが、大々的に始まってすぐ潰れたベンチャー企業に投資したことがある医クラちゃんにとってはアホらしいとしか思えません。キラキラちゃんは1年生の頃から意識が高すぎたせいで学年内で微妙にハブられており、こういう性格の医クラちゃんぐらいしか友達がいないのです。


 医クラちゃんはそんな講演会にはオンラインでも参加したくないし、来週土曜日は最近話題の青春リア充アニメ映画を見て感想をツイッターに投稿しなければならないのでどうにか断る方法を考えました。


「私は出られないけど、後輩にツテがあるから学年ラインに宣伝を流して貰おうか? それなら何人か参加したい人いそうだし」

「ありがとう! こういう時医クラちゃんって本当に頼りになるよね。また今度資料あげるからね!」


 キラキラちゃんはそう言うと他の数少ない友達に同じ話を持っていき、医クラちゃんは資料の内容というより資料をくれていることへの返礼として後輩にラインを送りました。



 1週間経っても既読は付きませんでした。



「医クラちゃん、コーシー先輩の講演会に参加したらボランティア部員しか来てなかったんだけど、本当に後輩にライン流してくれたの?」

「知るかボケェ!!」


 休み時間にツイッターで社会に物申している時に文句を言ってきたキラキラちゃんに、医クラちゃんはつい本音が出てしまいました。



 (つづく)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る