第2話 生き残る術は……?


俺はショックで気絶するように寝てしまったようだ。魔王は睡眠も食事もいらないというのに。

「くそ……なんでだよ……くそっ!」


 この力じゃ他の能力を奪おうにも奪えない。ガイドですら、


「……お気の毒ですが……これでは……」


 この始末だ。だが、俺も思ってるから何も言えない。


 だが、このまま何もしないのか?

 答えは否。


 こうなってしまったら、意地でも生き延びてやる。


「あと3日か……」


 丸一日損しちまった。俺はコアからダンジョン操作の項目を選ぶ。最初に神からの贈り物として20000DPが送られてきている。俺からすれば、この20000DPは生命線だ。使い道を慎重に考える必要がある。


 まずは配下だ。Gランクしか召喚できないが、Gランクはどんなのがいるんだ?


俺の配下項目には4種類の名前しかなかった。

・スケルトン

・ムーシュ

・亡霊

・泥人間


 ガイドに聞いたところ、スケルトンは肉のないゴブリン(Fランク)で、知性がないため命令したことしかできない。

 ムーシュは能力のないただの蝿だ。

 泥人間というのは人型で動く粘土のようなものだ。知性は申し訳程度にある。亡霊に至ってはその辺を浮いてるだけで攻撃もできずにうめくだけだ。あちらの攻撃も効かないが魔法で普通に死ぬらしい。……やっぱ魔法もあんのか。


「全員1DPか。とりあえず、一体ずつ召喚だ!」


 俺が召喚、と念じると床に輝く4つの魔法陣が出現する。

 そこから、4たいの、きっとこれから長い間世話になるだろう魔物がズズズ……と出現した。

 全身が理科室にあるような骨の魔物……スケルトン。頭蓋骨にデカデカと×の印が刻まれてる。どろどろとしている人型の魔物──いや、これはもはやスライムだろ──泥人間。蝿は小さくて×マークが見えない。亡霊は……うお!?


「うごおおおおお……」


 正直にいうと、怖い。落武者のような生首が半透明になって浮いているのだ。

 

「よ、よろしくな……」


 恐る恐る頭を撫でようかとも思ったが、説明通り物理的には触れないらしい。


 ──ハッ!


 希望が見えたかもしれない。確か……


 俺はダンジョン構造の項目を選択した。


1階層

 土の洞窟 

モンスター4

 トラップ0

 宝箱0

 外装:洞窟

 DP:19996

 ダンジョンレベル:1

 総合ダンジョンランク:G


 

 相変わらずひどい評価だが、ちょっといじってみると、俺は考えたことができそうでニヤリと口元を歪める。


「大丈夫ですか、マスター。私もこの結果には残念ですが……そこまで落胆することも……」


 ガイドが笑う俺をみて壊れたと勘違いしたんだろう。

 だが、俺はやれるとこまでやると決めたんだ。こんなことではめげない。


「ガイド……いいや、これから一緒にいるんだし名前をつけようか」


「! ……嬉しいのですが、すぐにその名を失う可能性があるので……思い出を残すわけには……」


 思い出か……ガイドってのは、俺たち魔王のそばにいる時だけ解放されるんだろうか……

 

 なぜだか急に、そんな考えが浮かんだ。まるで、思考が通じ合っているみたいだ。


 あと、すぐに失うかもって、主の俺を疑ってるのか? まあ、言い返せないのが辛い……


「なあ……ガイド。じゃあさ、一つ約束してくれよ。」


「約束、ですか?」


 困惑するガイドを他所に、俺は魔王らしく宣言する。


「もし俺が他の魔王を倒して、いまいる地域を制覇したら……」


名前を上げさせてくれ。


 俺のその言葉に恐らくガイドは息を呑んだのだろう。数秒間、返事はなかった。


 なぜかは分からない。でも、お互い少しだけ、ほんの少しだけ心が通じている気がする。

彼女は俺の叶いっこないだろう宣言を受け、しかしバカにすることはなかった。


「……わかりました。ともに頑張りましょう。そして生き残りましょう。」


 淡々と彼女はいうが、多分照れてる気がする。


「……照れてるとか水晶に向かって考えてませんか?」


 ……やっぱ違うかも。


 なんだかそっけないような声色の彼女から逃げるように俺はダンジョンをいじる。


 2日後……


 可能な限りダンジョンをいじった俺のダンジョンは、こんな感じになった。



1階層

 土の迷宮

モンスター25

 トラップ10

 宝箱1

2部屋目

 土の迷宮

 モンスター60

 トラップ30

 宝箱3

3部屋目

 墓地

 モンスター10000

 トラップ11

 宝箱0


 外装:洞窟

 DP:2254

 ダンジョンレベル:1

 総合ダンジョンランク:G



 正直これでGランクってのが不思議だ。全員が×持ちだって判断してるのかな?レベルは経験値が必要だから、まだ皆1だろう。


「…………」


 ガイドが目を見開いて……いや、目ないけど……固まってる。固体だけどっ

 成長に目を剥くものがあったようだ。……いや、目ないけどねっ?


「これでしばらくは生き延びられるだろう……多分」


「……不安ではありますが……本当にあの仕掛けで撃退できるでしょうか」


 ガイドがいうあの仕掛けとは2部屋目……もとい、勝手に細長く広い1階層を土壁(500DP)で分けたうちの2番目の部屋の仕掛けだ。

 そこの仕掛けは少々特殊になっており、毒矢や落とし穴などの数々のトラップとともに侵入者を撃退する仕組みだ。


 俺は絶対最初の数回は撤退すると思うけどな……と考えてたりする自信作だ。


 1階層は人間を呼び込むために、と時間をかけてもらうために宝箱があり、蝿数体とスケルトンのみの構造だ。低レベルの人達が通ってくれたら嬉しいが……


 そして3部屋目。ここは正真正銘の全力防衛エリアだ。ここを突破されるとコアルーム──俺が待ち受ける、この部屋に辿り着かれてしまう。そのため、アンデッド属性にバフがかかる墓地のエリアを、1階層の3分の1のみということで3000DPで部分購入。本来10000DPするらしい。そこら中に毒霧トラップを仕掛け、入り口にモンスターハウストラップ(4000DP)を仕込む。これは、踏むと中の魔物が前方にどんどん出現するという凶悪トラップだ。10000のスケルトンや亡霊、泥人間が出現する。


「さて……あと10分もすれば残り24時間を切るな。」


 コアに通知で、始まる前の魔王集会とやらを開くから0:00には準備しとけときていたのだ。そのため、俺はブロンズソード(20DP)を腰に下げて待機している。


 やがてその時が訪れ……


 視界が暗転した。

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