第20話 遊園③

正です。

前回までのあらすじ、白金さんが黒ギャルの黒姫さんになった……なんだそりゃ。


「コネコーランド最高♪コネコーちゃん達マジで可愛い♪テンション上がる♪」


騒がしいな白……いや黒姫さん。

周りの人達も騒がしい黒姫さんを白い目で見ている。学校のアイドル【推し姫】が落ちるとこまで落ちたもんだ。

ふと竜也が俺に近寄り耳打ちする。


「おいっ、正。悪いことは言わねぇ、早くあの宇宙人とは別れた方が良い。」


大丈夫だ竜也。仮初のカップルだから、こんなテンプレみたいな化石ギャルと付き合う度量は俺には無いよ。


さてここで、コネコーランドについて簡単に説明しておこう。

コネコーランドとは我が町の御当地遊園地であり、地元の根深いファン、県外のファンも多い人気の遊園地である。

看板キャラの猫のコネコーちゃん、母コネコーちゃん、父コネコーちゃん、姉コネコーちゃん、犬コネコーちゃん等バリエーションも豊富であり、グッズの種類も多い。


「コネコーちゃん可愛いですねぇ♪」


美鈴もコネコーちゃんを見ながら目がウットリしている。あの一筆書きでも描けそうなシンプルなデザインが世の女性のハートを鷲掴みにするのだろう。羨ましい限りである。


「ねぇねぇ♪どのアトラクションに乗るー♪」


黒姫さんがアゲアゲテンションでそう言うと、同じくテンションアゲアゲの美鈴がこんなことを言い出した。


「コネコーデッドコースターに乗りたいです♪」


「……えっ?」


美鈴の発言にテンションアゲアゲ状態が解除されて真顔になる黒姫さん。


コネコーデッドコースターとは、ファンシーなコネコーランドにイメージに反した足場の無い吊り下がり型のジェットコースターて、時速300キロ、連続5回転ループ、目玉のレーンとレーンの間を飛んで移動するビッグジャンプがある、心臓の弱い方は本当に乗らないでください!!の恐怖のアトラクションなのである。


「ぜ、絶叫系か、まぁ、俺は怖くねぇけどな。」


少し声が上ずる竜也。どうやら少し絶叫系が苦手らしい。

まぁ、俺も人のことは言えない。自慢じゃ無いが足の震えが止まらないからな。


「じゃあ乗るってことで良いですね♪」


いや、誰も乗るって言ってないぞ美鈴。勝手に話を進めるんじゃ無い。

でも乗ることになるんだろうなー。話の流れ的に乗るよなー。


ここでチラリと黒姫さんの方を見てみる。てっきりアゲアゲのテンアゲー♪とか言いながら騒がしいんだろうなぁと思っていたら、黒い顔を青ざめさせて、今にも吐きそうな顔をしていた。



「ここです♪じゃあ早速並びましょう♪」


反対意見も出なかったので、結局は乗ることになり、デッドコースターの長い列に並んだ。こんなデンジャラスな乗り物に乗ろうとする物好きがこんなに居るなんて世も末である。

あー隕石が落ちてきてデッドコースター壊れないかな?


「正君、正君。」


不意に隣に居る黒姫さんが耳打ちしてくる。その声は白金さんのものだったので、どうやら秘密の相談らしい。全然関係無いが良い匂いがして少し興奮してしまう。

更に黒姫さんはこう続ける。


「実は私、絶叫系のアトラクション苦手なんです。」


それは分かってる。あれだけ多かった口数が無くなり、先ほどからはぁーっと溜め息ばかり吐いているからな。


「ですが、もう覚悟を決めました。推しの二人が叫んでいる姿を見るために私はデッドコースターに乗ります。しかし、ここで一つ問題があるのです。」


問題?何だろ?もしかして正面から二人の絶叫を見たいから逆乗りしたいとか言い出すんじゃなかろうな?それは流石に危険すぎる。

だが、黒姫さんの問題とは、僕の予想の斜め上を行く問題だった。


「絶叫系に乗ると私は100%漏らしちゃうんです。」


「えっ?」


思わず素の声が出ちゃう俺。その声に前に並んでいる美鈴、竜也の両名がこちらを振り返ったので、俺は慌てて「な、なんでもないよー」と取り繕った。

そして今度は音量を下げた声で黒姫さんに話しかける。


「やばいじゃないですか。ちゃんとトイレ行ったんですか?」


「き、緊張で出なかったわ。それに全部出してても、きっと漏れるわ。パッションと同じで、お漏らしって体から自然と溢れ出るものだから。」


何をかっこいい風に言ってんだか、皆んなの憧れの推し姫が漏らしたとなっては、地方ニュースぐらいには出るかもしれない。

見出しはきっと【ファン騒然!!推し姫まさかの放尿事件!!】だろうか?


「一応、こんなこともあろうかとオムツは履いてきたんだけど、保つかどうかは五分五分といったところね。だから、もしも外界に私の聖水が漏れた時は、私のことちゃんとフォローしてね。じゃないと泣くから、上も下もびしょ濡れになるから。」


「ど、努力はしてみます。」


漏らした女子のフォローなんか経験無いのだけど、とりあえず全身全霊をかけてフォローすることにした僕。

しかしながら、その決意は杞憂に終わった。

デッドコースターは想像の10倍以上のデンジャラスマシーンであり、乗り終わった後、俺も竜也も放心状態。美鈴だけキャッ♪キャッ♪と余韻に浸っていた。

これだけの惨事を引き起こしたデッドコースターだが、肝心要の黒姫さんからは一切の漏れもなく、彼女は涼しい顔をしている。

というか股間が本当に涼しいのかもしれない。

最近のオムツの吸水率は凄いなぁ。














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