花の島の秘密

ありま氷炎

第一章 波乱の赴任日

ある日の少年とその父。


「父さん、僕は誰とも結婚しなくてもいいかな。僕が結婚すると奥さんは死んでしまうんでしょ?」


 少年は「父さん」と呼ぶにはとても若い青年を仰ぐ。

 少年と青年の顔はとても似ていて、血の繋がりが感じられる。

 少年はまだ十歳前後、そして青年はまだ二十代に見えた。なので、親子というよりも兄弟のような二人。

 二人は大木の影で涼みながら、話を続ける。


「……でもヒトシは十八歳までに結婚しないと死んでしまうんだよ。それでもいいのかい?」

「いいよ。だって父さんも、母さんが死んだ時、悲しかったんでしょ?僕はそんな悲しい思いをするくらいなら死んだほうがいいよ」


 少年ははっきりと意志を伝え、青年は何も言わずただ悲しそうに微笑んだ。



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