可愛い女の子たちは俺のアレにいろんな意味で興味津々らしい。

「……わんこのの無限力が発動して、この六畳間の戦闘空間領域は多次元宇宙に飲み込まれてしまった。……もう我々の手には負えない、四十八手の交接による身体接触が引き金になってしまうとは何と皮肉なものだ。我々は神に近づこうとして反対にとんでもない悪魔を産み落としてしまったのか!?」


「……広瀬部長、あなたは自分自身を責めないで下さい。ああするしかなかったんです」


「森田整備兵、無理に喋るな!! 傷は浅いぞ、しっかりしろ……。すぐに救護班が来る。それまで気を確かに持っているんだ」


「ひ、広瀬部長は何をやるのにも完璧なのに嘘をつくのだけは下手でしたね。でも優しい嘘です……。自分の身体は自分が一番分かりますから。ははっ、整備のように上手くはいきませんね」


「森田っ!! もう喋るな……。もういいんだ」


「広瀬部長の腕の中ってあったかいな、まるで故郷ふるさとの母さんの腕に抱かれているみたいだ。でも残念なのは部長の顔が良く見えないや……。あ、雨が降ってきましたか、千穂ちほの顔に雨粒が落ちてきましたよ。大粒の雨だぁ」


「も、森田、もういいんだ、お前はよくやった。六畳間の多次元宇宙化は阻止することが出来なかったが赤星たちを救出することが出来た。それはお前の尽力のおかげでもある。そのことは誇りに思って欲しい……」


「へへっ、未祐ちゃんには幸せになって貰いたいな。千穂のかわりに。そうだ、広瀬部長、未祐ちゃんに今度会ったら伝えておいてくれませんか、お兄さんと絶対に幸せにならないと承知しないぞって……」


「おいっ、森田、何を言っているんだ!! お前には故郷に残してきた許嫁いいなずけがいるんだろう? 弱音を吐くな。戻ってこい。向こう側に行くんじゃない!! 頼む……」


「ぐふっ……!?」


「お、おい、森田、嘘だろ……。目を開けてくれ!! ……もりたあああああっ!!」




 *******




「はい、二人とも、カット、カット!!」


 ……私、赤星未祐はやっと我にかえることが出来た。


 拓也お兄ちゃんの部屋、その六畳間で繰り広げられる壮大な茶番劇からやっと脱却することに成功した。


「……もうっ、未祐ちゃんのいけずぅ。千穂は今回の自主制作アニメのシナリオライターとして最高の物語をつむいでいるのに!!」


「未祐が聞いていたお話だと千穂ちゃんの書いた夢小説【先取先生せんしゅせんせい! 卒業まで絶対に先生の赤ちゃんを孕みます♡】はえっちな恋愛モノのはずだよ、さっき繰り広げられていたお話はどうみてもジャンルが違うじゃん!!」


「……未祐ちゃん、そんな固いことを言わないでよ、カテゴリーエラーは小説サイトの常だよ。私はまだマナーを遵守しているほうだよ。ひどいモノになると競合の少ないカテゴリーにわざと違うジャンル作品をぶっ込んで、上位にランクイン目的のカテエラ行為をしておいて涼しい顔の作者も多いんだからぁ!!」


「そ、ソレは未祐にはよくわからないけど、多くの自主制作アニメが陥るのが、闇鍋みたいに何でもツッコんでごった煮にするのが失敗のもとなんだよ!! ほら過去の作品でも、ラブコメにいきなりパワードスーツが出てきて街なかで無限ミサイルを乱射してメカによるバドルが始まったし、とりあえず半裸のメカ美少女が出てきてセカイ系の謎にせまるとか、超ありがちだよぅ!!」


「赤星、まあそう怒るな、四十八手の交接も無事、着ぐるみにドッキング出来た兄上の協力もありサンプル動画を多数取得したしな。まあ成り行き上、私が相手役を務めてしまって本当に悪かったが、お前がどうしても兄上に触れるのが恥ずかしいというのでな、仕方なくだ。はっはっはっは!!」


「……そ、それは、だって未祐、恥ずかしいし、広瀬部長なら安心してお兄ちゃんを任せられるし。それは部長が男の子には興味がないって私たちに話してくれたから、あっ!? そ、その大変失礼なことを言ってごめんなさい!!」


「別にかまわんよ、それについては本当のことだからな。うむ、しかしだな。兄上と模擬交接していたら、何というかこう身体にこみ上げてくる物があったな。本当に不思議な経験だ。逆に兄上に礼を言いたい気分だ……。殿方は決して忌むべき対象ではないのかもしれんな。不肖、広瀬沙織、十八にして初めて殿方の良さを知った」


 ええっ!? 広瀬部長が拓也お兄ちゃんによって開花させられちゃったのぉ!!

 本当に大丈夫かな? だって広瀬部長のことをお兄ちゃんは紹介してとか言ってたし……。未祐じゃあどんなに背伸びしても部長には敵わないよ!!


「も、もしかして広瀬部長!! 未祐ちゃんのお兄さんに恋心を抱いちゃったりなんかして……。本当ならコレはすごいゴシップだよぉ!! 女子校には広瀬先輩の非公認ファンクラブが複数あるくらいだし、学校中の百合な少女たちが悲願に暮れて枕を濡らすかも……」


「……はっはっはっは!! 赤星、案ずるな。私は礼節を重んじる。お前の兄上への気持ちは知っているぞ、だから横恋慕なぞありえん。だだ、武道家として赤星にお願いがあるんだ。私が油断していたとはいえ兄上から土をつけられたのは紛れもない事実だ。だからお前の許しがあれば今後も兄上とお手合わせしたい。武術だけでなく交接でもな!!」


「えええっ!? こうせつってかぐや姫じゃないですよね!! 男女のま、まぐ……」


「未祐ちゃん、マグワイヤだよ!! 男女の交接って、千穂はドキムネしちゃうな♡」


「そ、それは困るよぉ!!」


「森田、おふざけが過ぎるぞ!! 赤星、勘違いするな。私は兄上の気持ちを奪おうとは絶対に思わん。だがわんこの着ぐるみから射出された兄上と手合わせした瞬間、私は感じたんだ。底しれぬ力を、あれは一朝一夕で醸し出せるものではない。そうだな、例えると血の涙を流すような厳しい死線をくぐり抜けてきた者だけに宿る強靭な精神力だ。赤星の兄上は相当の手練てだれとみた」


 お、お兄ちゃんが手練って!? 運動は得意だけど、広瀬部長みたいに武道の心得は全然ないはずだけど……。不思議だなぁ、この間の夜の大きな物音といい、ロフトベッドの上でこっそりでもしてるのかな?


「じゃあ、未祐ちゃん、これから四十八手の動画編集もあるし、悪いけど先においとまするね、片付けが中途半端でごめんね」


「あっ、大丈夫だよ、千穂ちゃん、気にしないで。それよりもわんこの着ぐるみはこのままでいいの?」


「ああ、エアフォースわんこタイプR改なら、もし可能ならこのまま部屋に置いて後日回収に伺うよ。未祐ちゃんのお兄ちゃんのお許しがあればだけど……」


「う、うん、着ぐるみを置いておくのは大丈夫だと思うけど、今はお兄ちゃんがまた熟睡しちゃったから聞けないし……」


「赤星、兄上が起きたら礼を言っておいてくれ、またあらためて挨拶には伺わしてもらうがな、それにしても硬化の件が無事回避出来て良かったな。お前の献身的な看護のおかげだ。本当に愛の力はあるのかもしれんな」


「そ、そんな、愛だなんて……。未祐照れちゃいます。ただお兄ちゃんのことが心配で、無我夢中で手を握っていただけですから」


「恥ずかしがることはないぞ。兄上を心配するお前の気持ち、しかと見届けさせてもらった!! 兄妹愛を越えた真実の愛だ。何と尊いものか……」


 三人の視線が一点に注がれた。


 ……わんこの着ぐるみにドッキングしたままの拓也お兄ちゃんの姿を。

 可愛い垂れ耳の頭も装着しているので表情は伺いしれないが、とぎれとぎれだが、途中で会話も交わしているから大丈夫だろう。


 後で考えればその認識が間違いだということを未祐は知るよしもなかった……。



 次回に続く。



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