第20話 死神手帳10-魔界、妖怪、もう限界

魔界、妖怪、もう限界

魑魅魍魎、もう勘弁

埒が明かない話し合い

考え、違えば折り合わない

目には目を歯には歯を

悲しいかな、悲しいかな

善と悪の概念位は

幼き頃の育ち方

魂も肉体も生まれ変わって

埒が明く


ギル「ここが冥界か」

ゲル「そのようだな」


仁 「ようこそ冥界へ。大王がお待ちです」

ギル「大王…ああああああ!」

ゲル「どうした、ウグ」


 ゲルはギルの視線の先を見て驚いた。


 そこに鎮座していたのは自分たちの三倍もあるような巨大な物体だった。


ギル「こ・これが閻魔大王か」

ゲル「そのようだな」

大王「そなたらに頼みがある」

ゲル「ほ・ほう。頼み事か、な・何だ」


 ギルは式神、底辺であっても神界の者。大王は冥界。建て社会で言えば自分たちの方が上だ。

 しかし、鶏口牛後。

 中国戦国時代の縦横家(外交の策士)であった蘇秦そしんが語ったとされる言葉で、小さい集団の長を「鶏口」に、大きな集団の末端を「牛後」にたとえたもの。小さな集団の長になる方が、大きな集団の末端となるよりはよいという意味だ。駒になるより駒を動かせる才覚が重んじられる。階位の違いはあるが一目を置かざるを得ない存在だった。何より冥界のトップともなれば神界の警護・秩序を守る雷界とも深く通じており、疎かに扱う訳にはいかなかった。


大王「式神は色んな者たちを探れると聞いた」

ギル「ああ、限定項目がいるがな」

ゲル「漠然とした中、限定させるフィルターを掛ける。そして対

   象者を炙り出す。そんな処かな」

ギル「でもさぁ、そんなことなら魂界の奴らにも出来るぜ」

大王「彼らは個別が主軸となり周囲を監視する。それでは監視対

   象が狭すぎる」

ゲル「確かに。烏合の衆が相手なら私たちの方が適任だ」

大王「先ほど裁いた煮貝に関連した議員・その周囲を炙り出し、

   懲らしめる必要がある。三厄神にも手助け願う」

ギル「面白くなってきたじゃないか。手加減はしないぜ」

大王「忙しくなることを歓迎する」

ゲル「待ってくれ。私たちは善田海斗が指示者になっている。お

   前たちの指示では動けない」

仁 「それは大丈夫。善田海斗は魂界の者の支配下にある」

ギル「抜け目ないなぁ~。分かった。じゃ、俺たちは戻るとする

   か」

ゲル「ああ」


 善田海斗は、特性の死神手帳の使い方を模索していた。海斗は「デスノート」の愛読者だった。愛読書で扱い方を読み直し、使ってみたが思うようには行かなく、戸惑っていた。


海斗「式神を呼び出せたのは魂界の龍厳のお陰だったな。ここは

   頼るしかないか。でもどうやって呼び出すんだ?」


 海斗は念じたり、紙に書いたり経を唱えながら名前を読んだり、夢枕で出会えるのかと寝る前に名前を呼び続けたが願いは叶わなかった。

 海斗は冥界(ドゥアト)へ入るための呪文「エロエムエッサイム」と唱えて式神の執事を呼び出した。現れたのは「荒ぶる神」や「妖怪変化」類の荒御魂・ギルだった。ギルは龍厳から特性の死神手帳の扱い方を聞いていた。そこで念を押されたのが「暴れるのはいいが、これはバーチャルな世界であることを教えるな」という事だった。ギルは何でそんな無駄な事をするのかを龍厳に問うとバーチャルで行った事を参考に現世に活かすためだ。流石にバーチャルでなければ神々はお許しにならない。最重要な掟に「独裁禁止」があるからだ。

 特権を得た者は支配欲とそれを奪われる恐怖心から「独裁」に転じる。それを神は許さないでいた。独裁には自由はない。あるとすれば、束縛された自由、鳥籠の中の自由だ。

独裁からは奇抜さ自由な発想は生まれない。それでは健全な進化は望めない。


海斗「ギル、教えてくれ。この手帳の扱い方を」

ゲル「可笑しいなぁ、一度、使ったじゃないか、忘れたのか」

海斗「思いつく限りを尽くしたが駄目なんだ」

ゲル「あれはビギナーズラックだったのか」

海斗「五月蠅い。使えなければ宝の持ち腐れだ」

ゲル「宝ねぇ~。まぁいい、教えてやる」

海斗「頼む」


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