◇俺、楽しい大学生活?

――魔女とその師が授業をしていたとき、もう一方の主人公である男も、たまたま同じキャンパスにいた、食堂へ仲間と向かっているこの男だ。


特徴は……1000円カットの床屋で、毎回、「短め」と言うだけの頭髪(刈り上げはしない)、中肉中背より少しだけスマートな身体、塩の様な、醤油の様な、かといって味噌やソースでは無く、悪くは無いが、イケメンのレベルでは絶対に無い顔。


服はファストファッション多め。中学からやっとぼちぼちと自分で服屋に行く様になった感じで、正直、興味は薄く、色は黒か紺を選びがち、アクセサリーはしたことがない。


要するに、見た目は普通というか、少しだけ普通と違うかな……といったところだろうか。


――仲間の一人が、噂話を始めた。

「サークルの先輩に聞いたんさ、都市伝説」

「何の都市伝説?」

「この大学の都市伝説!」

「お!興味ある!教えて!」


――仲間が盛り上がる中、男はずっと無言でツッコミの機会を伺っている。

「それがさ、魔女の話でさ」

「魔女?」


……!


「魔女って!ここ日本だから!百歩譲って、いるとしても巫女か、くのいちだろ!」


――この男は、ツッコミの担当だった(得意だとは言えない)。


「……いや、でも聞いたことないか?母子手帳の噂」


「な、なんで突然、母子手帳!?」

「魔法の才能を持つ特別な子供がごくごくごくまれに生まれてくるらしいんだ」

「ごくごくごくまれに、ねぇ」

「それで、母子手帳を貰いに行くと、変なヤツが話しかけてくる……それで……」


俺は、思った。さっきから、変な話をしているなぁ……と。


この後も、魔力を抑えるお守りだとか、親は記憶を消されるだとか、うさんくさい話が20分以上も続いた、それで結論が……、


「この大学が魔法学校で、魔女が通っているってか!」

「そうだよ……今、丁度入って来て座った」

「タイミング良すぎ!!」

「3つ向こうのテーブル見てみろ」

女の2人連れだ……一方は、全身黒ずくめの服装。歳は俺たちと同じか、ちょっと年上か?だるそうな顔で、天ぷらそばをすすっている。たしかに少しオドオドしているが、あれが魔女っぽいのだろうか……。


もう一方は……俺たちよりも年上の女……、教授だとすると若すぎる気が……あれ、よく見ると、まるで西部劇に出てきそうな格好をしている……。あ!荷物の中にテンガロンハットがあった。


「ほら、あの二人が魔女だよ」

「は?」


思わず、俺は一瞬、沈黙してから、なんとかツッコミを入れた。

「いやいや、片方は魔女っぽいけれど、もう一方は魔女というより西部劇のガンマンだろ!」


「……冒険する考古学者にも見えるな」

「お前が魔女だって言ったんだろ!」

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