第46話 エピローグ

 

 ちちちちちち。


 どこかで小動物の鳴き声が聞こえた。

 俺は、まだ眠かったので「だぁ」と奇声をあげながら寝返りを打ち……そこで気づく。


 あれ、俺なんで生きてるんだ?


 と。

 しかも、目をあけてよくみると、赤子の小さい手が目の前にある。部屋は貴族が住んでいそうな豪華な調度品の並んだ部屋で、隣にベビーベッドがあって赤ちゃんがいる。

 よく見ると耳がとがっているからエルフなのかなと思う。

 

 その赤ちゃんと目が合い……「だぁ!」となぜかその赤ちゃんが俺に向かって手を伸ばしてきた。


 理解が追い付かなくて、俺は手を動かすが……寝返りを打つのが手一杯の赤子であることに気づく。


『ちょ!?これどうなってるんだ!?』


 俺が心の中で言うと。


『それは私が知りたいのですが……これはあなたの仕業じゃなかったのですか』


 と、隣の赤子……もう一人の俺が心の中で声をかけてきた。

 って、隣の赤ちゃんってもう一人の俺、エルフの大賢者か!?


『知らんっ!!つーか、魂を力に還元したのに輪廻ってのもおかしいだろ? どうなってるんだこれ?』


 俺が言うと


「説明しよう!」


 と、ずぼっと音がしてがベビーベッドとベビーベッドの間の床からカルナがひょっこり現れた。


『か、カルナ!?』


 俺が驚いて名前を呼ぶと、カルナがウィンクしながら


「これまでの経緯!

 本当のレイゼルが知っていた方法で、マスター達の魂をパワー還元から引き離した。そして吸収していた人間の魂を一人一人から影響の出ない分だけ少しずつわけてもらってマスターたちの魂の足りない分を補って、世界を再構築。それに成功したとおもったら、マスター達の魂だけ、同じ創造神の別世界に飛ばされちゃって、そっちの世界で記憶をもったまま輪廻しちゃった★ごめんなさい!」


 そう言って、ずぼぼぼぼと黒く染まった床に入っていく。


「「ばぶぅぅぅぅ!!!(まてぇぇぇぇぇ!!)」」


 俺ともう一人の俺の抗議の声が同時にはもるのだった。




「マスター凄くカワイイですっつ!!!!」


 赤ちゃん状態でアレキアにきゃきゃと持ち上げられて、俺はげんなりした表情になる。隣ではやはりシャルロッテにヨシヨシしてもらっているもう一人の俺がたぶん同じような顔をしていた。カルナたちの話では俺ともう一人の俺はエルフの双子として生を受けたらしい。


「だー!!!」


 俺が抗議の声をあげると、アレキアにぎゅっと抱きしめられる。


「心配したんですよ、マスター無事でよかったです」と涙ぐむアレキア。

 

 心配させたのは申し訳なかった。勝手に滅びようとしたのは悪かった。だがこの状況はおかしいだろうと、抗議の目を向けると、「かわいー」とやっぱり抱きしめられる。


 やばい、赤子のままでは何も抗議の意志が伝わらない。


「これがあのマスターですか……、赤ちゃんになると、あのマスターでもかわいいものですね」と、キルディスがほっぺをつんつんしてきた。


 いや、ちょっと待て。俺はおもちゃじゃないぞ。

 キルディスの指に噛みついてやるが、「くすぐったいです」と言われてこれっぽっちもダメージを与えられていない。くそっ、歯が少しでもはえていればダメージを与えられたのに!


「だーだーだー!」

(てか、違う世界に輪廻したはずなのに、なんでこっちの世界にお前たちがいるんだよ!)


 問う、俺。


「深淵の迷宮ごと移動してきた! 世界の真理に触れてカルナさらにパワーアップして同じ創造神から生まれた世界を移動できる術を手に入れた!」


 と、ドヤ顔で答えるカルナ。


『い、いや問題点はそこじゃねーだろ!?もう一人の俺、何とか言ってや……』 


 俺が言うと、もう一人の俺はシャルロッテの腕のなかでスース―と寝息を立てて寝ている。やつは赤子の体力の前に敗北したらしい。恐るべし赤子の体力のなさ。そういえば俺も眠い。


「それにしてもマスターこちらの世界もなかなか酷い事になっておるぞ!!世界の調停人、光の選定人としてマスターの出番じゃな!!腕がなるのじゃ!!」と、なぜか窓から本物レイゼルを担いだジャルガが入ってきた。


「マスター、これは【八回転生した大賢者、八回目の人生はチート能力で悪を成敗して無双します!】の始まりですね!?」とアレキアが迷宮産のマンガで仕入れた知識で謎タイトルを言いながら目を輝かせていう。いや、やらん。さすがに異世界でまで調停人をする気はない。もう俺の中で調停人は卒業した。あれだけやればもういいだろう。


 ……つーか、情報量が多すぎてついていけん……。


 眠気に、負け、そのまま意識が遠のく。



 こうして、終わったはずの俺の人生は――なぜか無理やり再開されるのだった。





~END~

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