2.41

 そうとも、二度と過ちなど犯すものか。胸を張って更生していこう。そして私は罪を償うために三億円を集めるか照美と一姫二太郎を設け一般的な日本の家庭を築くのだ。長女は英国の元首相の異名にあやかり鉄子。長男は俺の敬愛する作曲家の名から取って晴臣と名付けよう。おっと先走りすぎか。何せ家族となるのだ、照美の意見も聞かねばならぬな。二人で考え、二人で生きていくのだ。それと、宿が潰れたらこの田舎で商売を起こそう。起業だ、起業するのだ。家族を養うために会社を設立し富を得よう。アイデアも資金もないが夢とやる気は満ち溢れている。人生とは素晴らしきかな!





「帰った!」



 窓を跨いで帰還の挨拶。暫くぶりだな宿泊部屋よ。おや富士。なんだその顔は。




「ダンナ。何故お戻りに」


「何故って、そりゃあぁお前、戻りたくなったからだ」


「……何があったんです?」


「ふむ。実は茶屋の前に照美がいてな」


「え? バレていたんですか?」


「どうやらそうらしい。しかしだ、そんな事はどうでもよい。私は照美と改めて腹を割って話をして心を決めた。罪と向き合い、なさねばならぬ事をなそうとな」


「結婚なさるおつもりで」


「三億円が手に入らぬならばな」


「手に入るとお思いですか」


「やってみなければ結果は分からん」


「火を見るより明らかかと」


「であれば私は二児の父だ」


「……ま、いいでしょう。ダンナが飽きるまで付き合いますよ私は」


「飽きる飽きないの話ではないのだが、まぁいいだろう。引き続き世話になるぞ」


 子育てには祖父祖母の助力が頼りだと聞く。だが生憎照美も俺も両親には期待できん。そこで富士だ。頼むぞ高い高いのお兄ちゃん改め高い高いのおじいさん。是非、我が子のオムツを取り替えてくれ。

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