第22話

 僕の作戦は全部で第三段階が存在している。

 一段回目として、飢餓に苦しむ貧民をカスリーン王国の兵士にぶつけ、彼らの士気を折って一度撤退させる。

 二段回目として、反乱を鎮圧するために居ないはずの精鋭部隊で奇襲を仕掛け、カスリーン王国の主力を崩壊させる。

 

 そして、三段階目。

 砦にいる兵士まですべて使い、少し離れたところで陣地を作っているカスリーン王国軍を殲滅することである。


「上々上々」

 

 カスリーン王国軍本陣。

 アレステーヌ王国兵の攻撃を受け、大混乱となっていた。


「ク、くそったれめ……ッ!お前は一体何なんだッ!?」


「今から死ぬ君が知る必要はないよ」

 

 僕はカスリーン王国軍の本陣にいた一般兵じゃ勝てないような相手を確実に殺していっていた。


「強い兵は殺して、貴族は捕まえるー。僕の金づる出ておいで~」

 

 僕は気分良く短剣を振り回しながら戦場を駆け抜ける。

 ドワーフの国は常に謎の民族の侵攻を受ける修羅の国であり、戦場に立ち、敵を殺すことに対して僕は何の躊躇いもなかった。


「……およ?」

 

 戦場を駆け巡っていた僕……そんな僕を狙う強く鋭い殺気を感じて僕は素早く反応する。

 僕の短剣と敵の剣が交わり……強い衝撃を受けた僕の小さく、軽い体は少しだけ飛ばされる。


「むむ」

 

「ガキが調子乗っているんじゃねぇぞ?」

 

 僕を攻撃してきた人物。

 それは、軽い武装に剣を一つ持っただけの無精髭の酷いおじさんであり、僕が脅威として認識していなかった人物である。

 僕を奇襲するため、今ままでは能を隠していたのだろう。


「ぷぷ。折れた剣を僕に向けても全然かっこよくはないよ?」


「……ぁ?何を言ってや」

 

 おじさんの言葉。

 

 カランカラン。

 

 それはおじさんの持っていた切断された剣の一部が地面に落ちた音によって遮られる。

 僕の短剣はドワーフ製である。ただの剣を斬り裂くくらい造作でもなかった。


「くくく」


「……なるほどなぁ。こんなクソガキがぁ」

 

 二本の短剣を構える僕と半ばで折れた剣を握るおっさんは互いに向き合い、笑みを浮かべた。

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