第14話
活気がなく、道端に動かなくなった人が寝転んでいる。
そんな王都の街を歩き、僕がたどり着いたのはそこそこの大きさを持ったリリスの屋敷である。
「ふー」
僕は与えられた部屋のベッドに体を倒し、瞳を閉じる。
「うーん……まず、僕に足りないのは伝手だよなぁ。そこらへんはエミリア様を頼りたいんだが、やっぱ独自のもんも欲しいよな。この国なら裏の人間なんていくらでもいそうだけど、巨大組織はなさそうだもんなぁ」
僕が思い出すのは隣国の情勢。
あそこらへんを突けば色々と面白いことが出来そうなんだけど……問題はどう突くか……。
「はにゃー」
「リストーッ!夕食が出来たわよ」
僕が考え事をしていた時。
屋敷の下に居るリリスから声をかけられる。
「ほいほーい」
僕は落ちこぼれのドワーフである。
伝説上に語られているようなドワーフのように素晴らしい方法でこの国を救えるわけではない。
しかし、僕なりの方法でこの国を救ってみせようじゃないか。
「くくく……」
僕のために、ね。
■■■■■
侯爵家の一人娘にして第一王女に仕える騎士様の食事。
それがスープ一杯なのはどういうことなのだろうか?
「ごめんね……ほんと。うちの国は食料不足で……」
「いや、何も食べられないよりはマシだから全然構わないよ」
僕はそう言って、スープを口へと含む。
「えっ……甘」
そして、スープを口に含んで一言。
口いっぱいに広がる甘さに驚愕する。
「えっ!?甘い……ッ!?」
僕の言葉を聞き、驚愕したが慌てて
「ほんとだッ!あ、甘い!……ご、ごめん!塩と砂糖、間違えちゃったみたいッ!」
「……砂糖、あるんだ」
「ん?えぇ、あるわよ」
「そ、そうなんだ……塩と砂糖間違えたってことは塩もあるんだ……」
「えぇ。あるわよ」
「それ、売り物にならないの……?」
「なるわけないわよ。塩も砂糖もこの世界にいくらでもあるし」
「……そ、そうなんだ」
すっごい世界やな。
塩と砂糖とか貴重品だろ……ドワーフの国じゃほとんどなかったぞ。
地球の中世、近世のでも塩やら砂糖やらは貴重品だったのに、この大陸だと腐るほどあるんだな。
「……ふむ」
ドワーフの国相手なら塩も砂糖も売れそうだけど……どうやって販路を築くかだよな。
船……いつか作るか。
「……ごめんね。変なもの作っちゃって。作り直すから」
この屋敷に使用人はいない。
この食事もリリスが作ったのだろう。
「いや、全然。気にすることはないよ……ドワーフの国には砂糖があまりなくてね。久しぶりに口にする甘味二感動していたところだよ。ありがと。わざわざ僕のために作ってくれて」
リリスにはドジっ子属性もあったのか……僕はそんなことを考えながら甘いスープを口へと運んだ。
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