第7話

 アレステーヌ王国。

 人類社会の栄華が広がっているユーリモア大陸の最北端に位置する小国であり、夏は短く、冬は長い。

 国土の大半を不毛な岩と山に占められ、主要な産業も国内資源もなく、特に名物ものない……他国が攻めいる価値もないような弱小国家。


 そんな国の第一王女様を助けた僕はジメジメとした森から文明を感じることの出来るアレステーヌ王国の王都へとやってきていた。


「すみません。私の命の恩人である貴方に告げるのは心苦しいのですが、誰かを王城にお招きするには時間がかかってしまうのです……本来であれば今すぐにでも王城へとお招きし、感謝の意を示した後、我が国へと迎え入れたいとの申し出をすべきなんでしょうが……少しばかりはお待ちいただけませんか?」

 

 王都へとやってきた馬車の中で、僕はエミリア様より謝罪の言葉を告げられていた。


「いえいえ、全然構いませんよ。いきなり王城に身元のわからぬ者を入れるなどという危険を犯すわけにはいかないという事情も承知しております」

 

 美しい第一王女を狙う盗賊ッ!

 それを颯爽と救出してみせた謎の少女ッ!

 助けてもらったお礼に王城へと招待され、歓待を受ける……どこかのラノベとかで語られていそうな話ではあるが、現実世界でそんなことが起きたら『怪しい』の一言で終わる。

 どう考えてもマッチポンプにしか見えないだろう。 

 僕は何らかの目的で第一王女に盗賊を襲わせ、自分で助けて王女へと近づいた不届き者にしか見えない。


「エミリア様が王城へと帰還している間、不肖ながらこの私がリスト様の王都での生活のサポート、王都観光のお手伝いなどをさせていただければと思います」

 

 恐らく監視であろう。

 僕よりは弱いであろうが、そこそこ強そうな女騎士であるリリス様が馬車を降り、王都で自由行動を取るであろう僕のお供をすると申し出る。


「よろしくおねがいします。リリス様」

 

 僕はその申し出に快く頷き、リリス様と共に乗っていた馬車から降り、王都の土へと足をつけたのだった。

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