第9話 射撃場

 ギルドの敷地内には射撃場がある。射撃場はノルマルに昇格するための試験場であり、ノルマルに昇格した冒険者の魔銃の練習場所でもある。冒険者証を掲示して練習料を支払えば射撃場を使用することが出来る。


 射撃場は高さ3mほどの分厚い壁で町とは区切られているが屋根はなく雨風をしのぐ事はできない。それは、実戦に近い環境で射撃を行う為である。試験を受ける冒険者は、確実に合格するために出来るだけ天気の良い日を選んぶ。逆に練習をする時は、天候の悪い時を選んで、悪天候の中でも安定した射撃を出来るように練習する者もいる。


 射撃場は2つ射撃場を完備している。1つ目はルージュ用のクレー射撃場である。クレー射撃場では空中に放出されたクレーという皿を撃つ。2つ目はブロン射撃場である。ブロン射撃場は50m先に人型の的がありその的を撃つ。


 ノルマルの昇格試験は、ルージュを使用する者はクレー射撃場で6枚のクレーを1セットとして合計60枚のクレーを撃つ。50枚撃ち抜くことができれば合格である。

ブロンの昇格試験は、50m離れた人型の的の頭(直径30㎝の球体)にワンマガジンである30発中20発命中させることを1セットとして6セット行われる。6セット全て成功すれば合格である。



 ※ ブロン(アサルトライフル)について説明します。

 ブロンは魔弾をフルオートで発射できる。1発の威力はリュージュよりかなり劣る。ブロンも3種類ある。

 ネージュ=軽量型で大きさは50㎝で30発連射できる。連射速度は一番遅いがリコイル(反動)も少ないので扱いやすい。1発の威力が弱いのが難点。再装填には60秒かかる。初心者向きのブロンである。

 アヴァランチ=中量型で大きさは60㎝で30発連射できる。連射速度が早く1発の威力はネージュより強いがリコイル制御が難しくなる。再装填には70秒かかる。ネージュより値段が高い。

 グラシエ=中量型で大きさは65㎝で50発連射できる。連射速度は最初は遅いが徐々に早くなるためリコイル制御はかなり難しい。連射速度が上がるにつれて魔弾の威力がアップする。リコイルを制御するために膝をついて中腰で撃つ。再装填には90秒かかる。扱いが難しく値段も高いので上級者向き。


 

 ノルマルに昇格するにはルージュかブロンのどちらかの魔銃で挑む必要がある。私はルージュなのでクレー射撃場にむかった。


 クレー射撃場では3人分の射撃スペースが設けられている。今日は冒険者が1人練習に来ているので、2人分の射撃スペースが空いていた。私は小走りで空きスペースに入り、手を伸ばし『エスパス』と呟く。すると空間から愛用のエタンセルが現れた。私は肩幅程度に足を開きエタンセルのグリップを右手で握りしめた。トリガーを引くと魔弾が発射される。魔弾の大きさは1㎝ほどで発射されると5つに分裂する。1発で5発の魔弾に変わるので的には当てやすいが、ルージュの中では1番安価で小型なので破壊力はルージュの中では最弱である。しかし、軽量かつ発射後のリコイル(反動)がないので、スムーズに次の魔弾を発射することが可能なのでとても扱いやすい。


 私はセイフティを外してトリガーに指を当て、いつでも魔弾を発射できる準備をした。しかし、いくら待ってもクレーが飛んでこない。それもそのはず、私の姿は誰にも認識されていない。誰もいない所にクレーが飛ぶ事はない。



 『もう!私の実力を見せたかったのに』



 私はクレー射撃をするの諦めて、私の横の射撃スペースに移動したオレリアンの昇格試験を見学する事にした。



 「俺が1番に試験を受けるぜ」


 「好きにしたらいいわよ」



 レアは少し不満げな顔をしているが、1番手をオレリアンに譲ったようだ。



 「僕もかまわない」



 ポールは順番など興味ない感じで笑顔で譲った。



 ルージュで昇格試験を受けるのはオレリアン、レア、ポールの3人のようだ。



 「それでは最初にルージュの試験から行います。オレリアンさん、試験内容はご存じでしょうか」


 「もちろんだ。10セット中クレーを50枚をぶち壊せばいいのだな」


 「そうです。1セットに付き6枚のクレーが飛んできますので、10セット行います。オレリアンさんがおっしゃった通り50枚クレーを破壊することができれば合格です。オレリアンさんはフラムをご使用みたいなので、1セットごとに再装填をしてください」



 ※エタンセルの装弾数は5+1であるが、フラムは装弾数8+1である。1セット終えると魔弾が残ってしまうので、次のセットに備えて再装填をする。



 「いちいちうるせぇ。そんなの常識だ!」


 「では、1分後にブザーがなります。ブザーがなりましたら試験が開始されますので準備をしてください」 



 受付職員は淡々と説明をする。



 「いつでも準備はオーケーだ!」



 オレリアンは片手でフラムを握りしめ左右に移動し始めた。



 「クラブテップで試験を受ける気なのね」



 レアはぼそりと呟いた。



 クレー射撃ではクレーが宙に舞うだけで攻撃をしてくるわけではない。なので、動かずに狙いを定めて発射すれば、クレーに当てる事は難しくない。ノルマル昇格試験の合格率は60%であり、不合格になる者は射撃の才能がない者か緊張して本領を発揮できなかった者である。しかし、実戦では相手は動くし攻撃も仕掛けてくる。なので、オレリアンは実戦を想定してクラブステップをして試験を受けるつもりであった。






 



 



 

 

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