魔王殺しの英雄譚~そして勇者は真の英雄となる~

ダークネスソルト

第1話・平穏な日常

 早朝のとある村にて木剣が激しく当たる音が鳴り響く。


 村に住むジークとユウキの模擬戦闘である。

 互いに木剣を持ち、とても子供同士の模擬戦闘とは思えないような激しく技量の高い模擬戦闘を行う。


 それはこの村にとってはいつもの日常の光景であった。


 ジークとユウキ、二人は同い年であり恋のライバルであり互いに互いを認め合い切磋琢磨する最高の親友であり【英雄】という同じ夢を追う同士であった。

 そこれそ物心ついたころから一緒にいて、色んな馬鹿をやって迷惑をかけて、笑って泣いて学んで、今は互いに英雄に憧れ、冒険者になるために剣術の特訓をしている。


 それを嬉しそうに微笑む少女が一人。

 彼女の名前はイト、ジークとユウキの幼馴染であり、二人が絶賛片思い中のこの村に咲く一凛の花であった。


 二つの木剣が空を舞った。


「ふう。これで567勝・567敗・4589引き分けか。また引き分けか」

 互いに木剣をキャッチしつつ。ジークがそう呟く。


「そうだな。また引き分けだ。ハア。本当にジークは強いよ」


「それを言ったらユウキだって強いよ。なんたってこの剣術の天才である俺と肩を並べる程強いからな」

 事実ジークは剣術の天才であった。

 それこそ100万人に一人というレベルの天才であった。

 それでいで努力を怠らない努力の天才でもあった。

 この調子で努力を重ねれば一つの国の騎士団長にまで成り上がる、ないし、英雄として歴史に名を刻むことすら出来る才能を持っていた。


 だけどそれ以上に恐れるべきはユウキである。

 その天才であるジーク以上の才能を持ち、普段は剣術ではなく父の仕事である狩りの手伝いをして、弓や投擲、短剣術等の剣術以外の技術に時間をかけているにも関わらず、剣術の特訓のみに勤しんでいるジークと同じ強さを持っていたのだ。

 その異常さというのは分かる人には分かり過ぎる程分かり。もしもその才能を理解出来る人がいれば今すぐにでもユウキは王都に連れてかれ英雄になるための専門的な教育が施されていたであろう。


 しかしここは小さな村。 

 人口は100人程度。悲しきかなその才能を見抜けるものは誰一人としていなかった。


「二人共お疲れ様。はいこれお水」

 イトは優しい笑みで二人にお水を渡す。


 イトはジークとユウキとは違ってなんの才能も持たない一般人。されどこの村には同い年の異性というのはイトしかおらず。またこうして特訓終わりに健気に水を持って来て、手渡してくれ、簡単なお弁当を作ってくれる優しい少女。

 二人がそんなイトに惚れると言うのはある意味で当たり前という話であった。


「ありがとう。イト」

 そうお礼を言ったユウキをジークは牽制して横入りする。


「ああ。いつも助かるよ」

 イトに近づこうとするジークをユウキが手を使って牽制する。


「フフフ。どういたしまして」


 ジークもユウキも互いに牽制してイトにはアタックできずにいた。

 それを割と天然なところがあるイトは一切気が付かずに今日も無自覚に二人の優しい笑顔を振りまく。

 二人はその笑顔に癒されつつも。下手に手を出して関係が悪化するぐらいならと妥協をして三人で歩き始めた。


「ねえねえ。二人共もうすぐ冒険者になるんだよね?」


「ああ。俺は英雄になりたいからな。昔魔物暴走からこの国を救った父さんみたいな英雄にな」

 ジークの父親はこの国の元騎士団長であり気高い戦士であった。

 悪を許さず弱者を救い、正義と法の名の元に数々の人を救った英雄。誰もが認める最高の英雄だった。

 だけど結婚をしてジークが生まれた時に年も考えて引退をしてこの村に移住した。

 されど、悲劇は起きてしまう。とある日のこと、王都にて魔物暴走が起こったのだ。

 それを食い止めるために、王都の住民を守るために貴重な転移の巻物を使いかつての仲間達と共に魔物暴走に立ち向かい・・・・・・死んでしまった。

 だけどそれによって何十万という王都の民を救いだし、何千という騎士団に冒険者達の命を救った父親をジークは心の底から尊敬していたし、憧れていた。 

 そんな父親の背中を見て育ったジークだからこそ英雄を目指した。母親は血は争えないねとそれを笑顔で応援した。


「俺も英雄になるぜ。だってお母さんと約束したからな」

 ユウキは幼い頃に母親を亡くしている。

 その亡き母がよく自分に読んでくれた絵本に出てくる英雄にユウキは憧れていた。最初は子供のよくある夢物語。

 されど、母親の最後の言葉「ユウキ、貴方は英雄になれるわ。お母さんはそう信じている。だって私の息子だもの。フフフ。ユウキともっともっとずっと一緒にいたかったけど。お母さんもう駄目みたい。でもこれだけは覚えておいてお母さんはユウキのことを心から愛してるわ」

 この言葉がユウキの胸に深く刺さり、天国にいる母に英雄となり夢を果たした自分を見せる為に英雄になろうとしている。


 ジークは父をユウキは母を。

 皮肉なことに凄く境遇が似ている二人。

 だからこそ二人は互いに切磋琢磨し合える最高の友になれたのだ。


「フフフ。二人なら英雄になれるって信じてるわ」


「ありがとう。イト。そう言ってもらえて嬉しいよ。これは無理してでも期待に応えなくっちゃな」


「ああ。そうだな。頑張ってイトの期待に応えないとな。これは凄く大変だ」


「もう。からかわないでよ二人共」


「いや。すまんすまん」「ついな。悪気はないよ」


「もう。あ、とそういえば二人共、もうそろそろ冒険者になるために村から出ていくのよね?」

 冒険者・・・それは冒険をする者ではなく。冒険者ギルドという世界で最も大きな何でも屋組織に所属している者のことを指す。

 冒険者ギルドではランクがあり。そのランクに応じて様々な依頼を受けられる。

 そのランクをSまで上げると、人々からは英雄の領域と呼ばれるようになり、人によっては○○の英雄なんて呼ばれ方をされる。つまり冒険者ギルドに所属してSランクまでランクを上げるのが英雄になれる最大の近道というわけである。


「まあな。だってそれが一番分かりやすいからな」


「そうそう。それと流石の俺も父さんみたいに魔物暴走を食い止めて死んでからその功績を称えられて英雄なんてのは嫌だよ」


「確かにそうね。でも、二人共冒険者ギルドに行くのか。・・・そうなると寂しくなるね」


「大丈夫。英雄になったら俺が迎えに行くよ」


「あ。おいジークお前何抜け駆けしてんだよ。俺も英雄になったら迎えに来るからね」


「フフフ。二人共ありがとう。じゃあ私待ってるからね」


「ああ。俺がユウキよりも先に英雄になってイトを迎えてやるよ」


「いや。俺がジークよりも先に英雄になってイトを迎えるよ」


「フフフ。じゃあ私どっちが先に迎えに来てれるから楽しみに待ってるよ」


「ああ。そうしてくれ」


「まあ、俺の方がジークよりも早く迎えに来るけどな」


「おい。ユウキ、てめえ。言ったな」


「ああ。言ったさ。だって事実だからな」


「よし。分かった。じゃあ勝負だ。もう一度勝負だ。今度こそ俺が勝ってやるぜ」


「おいおい。負けても知らないぞ」

 互いに腰にかけた木剣を抜き構える。


「二人共ストップ。私のことで争ってくれるのは嬉しいけど。早く家に戻って朝ごはんを食べて仕事をしなくちゃいけないよ」


 ・・・・・・・・


 イトの言葉に少し沈黙が流れるも、互いに木剣を収める。


「ハア。イトの言う通りだな」


「本当に全くだ」


「さて。今日もお父さんの狩りの手伝いをしますか」


「俺も畑の様子を見に行かないとな」


「それでよし」


「全くイトには適わないな」


「ああ。本当にな」


 そう言って三人は幸せそうに微笑んだ。

 いつもの光景。

 平穏な日常の風景。

 そして三人はこの日常が凄く好きだったし心地が良かった。


 ―――――――――――――――


 私にしては珍しくしっかりとプロットを組んだうえで書いてます。

 面白いと思っていただけましたら星やハートを入れていただけるとモチベーションが上がっていっぱい書きます。

 というか真面目にこの小説人気出たら、バイト辞めて小説書くのに集中できるから、頑張って書きます。

 え?他の連載作品書けって、それはもう、本当に申し訳ございませんとしか言えません。いや書いてるんだけど、俗に言うスランプって奴が私に襲い掛かってくる的な。

 はい。マジで本当に心の底から申し訳ございません。

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