第11話 空の謎

第2節成績

創●vs聖○

海●vs地○

炎●vs邪○

鋼●vs空○

氷●vs獣○


「あのSランクの超火力と歌のサポートがあって勝てないって地のマスターはどんな手を使ったんだ?」


先週に力の差を見せつけられた海が負けたことは俺の中で衝撃的だったので海のマスターと通話が繋がって最初に聞いたのはそのことだった。


「向こうのSランクが回復魔法が得意でダメージを与えても回復されるじり貧状態にさせられたのよ。こっちもレヴィはディーヴァのおかげで回復するからやられはしなかったけど膠着状態に持ち込まれてね。こっちの防衛は水中の魔物に任せてたらスノージャイアントが水上に氷の足場作り始めて上を突破されてゲームエンドよ。次からは水上の対応もしないといけないってことが学べたわ。」


 やはり海のマスター本陣は水中フィールドだったらしいがダンジョンコアの間は水中に設置できないので上を抜かれて終了したらしい。


「なるほど。そういう突破方法もあったわけだ。」


 次回から対策されるだろうからもう使えないだろうが。


「そっちはどうだったのよ。Sランクはまた温存?」

「まあ、まだ本調子じゃないしな。とはいえ、どちらにせよ今回はスケルトンがほぼ使えなかったからだいぶ厳しかったな。」


 こちらの様子の報告も終え、話題は他のダンジョンに移る。


「連勝は聖と獣、空の3つか。聖は初戦が相性有利の邪だし昨日がSランク不在の俺のところだからわかるけど獣と空はどんな手を使ったんだろうな。」


 炎が負けたのは予想外だったがAのカードを渡したことは伝えてないのでここでは黙っておく。


「空の情報なら地のマスターから手に入れてるわ。地のマスターとは同じBランク主体同士頑張ろうってことで情報共有の同盟結んだのよ。」


 どうやら海のマスターは情報網を広げているらしい。


「確かに地のダンジョンも話を聞く限りどう突破したのかは気になるな。」


 海のマスターに話を続けるように促す。


「向こうにはBランクの魔物が2体いたらしいわよ。Sランク同士のタイマンに持ち込まれて回復できない状況でAランク1体とBランク2体でごり押ししてきたって言ってたわ。空って言うくらいだから速い魔物が多かったらしくて後手に回ってる間に敵のAランクが止めきれなくて崩壊したみたい。自陣は罠とDランクで足止めして無理矢理攻められたみたいね。」


 攻め方はなるほどと関心する部分もあるのだが気になるのは最初の部分だ。


「初戦からAランクにB2体か。さすがに気になるな。可能性は2つ。なんらかのDPを増やす方法を見つけたか最初の20000DPを生成コストに変換したか。」


 10000DPあれば生成コスト1000ポイントに変換できるのだが俺のやった100000DPを50000ポイントに変換するのに比べて効率はあまり良くない。ちなみに50000DPあれば10000ポイントと変換できるのでAランクのカード1枚分になるのだがそれだけ溜められてるならA2体で無いとおかしい。


「やっぱりそうなるわよね。最初のDPを全部そこに費やすってあり得ると思う?」

 同じところを疑問に思っていたであろう海のマスターに問われる。


「無いとは言い難いけどDPを生成する手段が無ければやったとしか思えないな。」


 結局、結論が出ないまま第3節を迎えることになった。




第3節成績

創●vs地○

海●vs空○

聖●vs炎○

氷●vs鋼○

獣●vs邪○


「空はどうだった?」


 3週目の翌日、例のごとく海のマスターと通話する。


「さすがに水中フィールドそのものを凍らされたどうしようも無いわね。レヴィまで守備に回したのに戦力半減じゃあ受けきれなかったわ。」


 向こうに氷属性のAクラスがいることはわかっていたが思った以上に氷魔法は強力だったらしい。


「Aクラスの破壊力はすさまじかったってことか。それで相手のDランクの魔物の数はどうだった?」


 こっちが本題。先日の話の中で敵が攻撃特化で来て防御をDランクと罠で足止めをしてくる作戦ならDランクの魔物はすべて投入するはず。その数で相手の状況がわかるのではないかと仮説を立てた。


「ディーヴァに探らせてみたけど数え忘れがなければ22体ってところみたいね。」


 ディーヴァはどうやら索敵もできるらしいので敵のダンジョンを音で探ってくれた。索敵だけは敵陣奥まで届いたらしく一本道で部屋数は最大のダンジョンコアの間を含めた10部屋あったそうなので隠し部屋も無し。空のDランクはトカゲ型の中型の魔物らしいがダンジョンに魔水晶があるのなら既に間引いていても余裕で上限まで満たせる数はいるはずだ。トカゲの魔物は繁殖力が高くなく、繁殖で数を増やすのは難しいはずであり、個の戦力はスケルトンたちよりも強い分湧く頻度が少ないはずで魔水晶がなければ湧く数は2日に1匹と俺たちは予想した。


「俺たちがダンジョンを作ってからちょうど45日くらいか。となるとちょうどそれぐらいの数になるか。」


 一度に配置できる魔物の数は30体で空の魔物はS、Aが1体ずつ、Bが2体の合計4体。Dランクの魔物は26体まで配置できるはずなので少し余りがある。


「これは最初のDPを使ったって考えて間違いなさそうね。」


 この結論は間違いないだろう。


「君の協力に感謝するよ海のマスター。」

「敵の魔物数を数えれないかって言われたときは驚いたけど、この情報の有無は今後に関わるわ。検証して良かった。」


 海のマスターはこれを調べるために防御に徹し、1敗した。さすがに俺が報酬無しでこの情報を得るのは悪いか。


「海のマスター、ここからは交渉だけど俺はこの情報をタダでもらうのはフェアじゃないと思ってる。君は1敗してるしね。」


 素直に気持ちは伝えるべきだと思ってそう言う。


「何かくれるの?でもあなたのダンジョンこれ以上弱体化したら厳しいんじゃないの?」


 海のマスターの指摘は最もだ。


「正直厳しいよ。俺も来シーズン以降に響くことはしたくない。だから、今シーズン限りのレンタルってことでどうだ?うちのドライアドをシーズン終了まで。そっちがプレーオフまで進んだら成功報酬でBランク1枚。」


 まあ、俺から出せるカードはこれくらいだろう。


「あんた、それだしたら今シーズン終了じゃない。」

「うちのエースがいつになったら調子が戻るか未定なもんでね。どうせ厳しいなら少しでも対価が得られた方がいいだろ?」


 どちらにせよどこかで切ろうと思っていたカードだ。


「それが本音ってことね。どう思うレヴィ?」


 隣にいるのだろう従者に海のマスターが意見を聞く。


「正直、うちも2連敗だから厳しい状況に変わりはないんだけど。でも全勝は空だけになったし星一つ差の残りに全て勝てばいけるから諦めるには早いよね。ここから巻き返しを狙うならB1体は欲しいし、悪くは無いんじゃないかな。だけど、上に進んでもBランク要求されるならトレント1体も要求したいかな。」


 レヴィが主人に自分の意見を伝える。これを俺が聞いてるのを見越して要求を上げてきたか。


「俺はそれで構わないよ。」


 向こうもこちらの呑めるラインを計算しながら要求してきてるしこれくらいなら構わない。


「それじゃ、交渉成立ね。」


 海のマスターが最後にそう言って新たなトレードが成立した。ここから海の反撃が始まる。

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