WOMAN詩…やさしく殺して

海月

1 捜されなくなった女

捜すのをやめた日からたぶん

暮れるのが早くなった

そう、女は思う…思うが

思うだけでたしかめはしない


そそくさ整えた一人分の

惣菜をつついてると

もう夜は更けていて肌寒い

黙ったきりのスマートフォン


疲れが日毎にたまっていく

女は寝そべり

窓の月を見上げる

流行り歌でもくちずさもうか

…明日の天気は快晴とか


お局様に誘われた退社時刻

女はルージュを引き直す

習い性になった面倒くささ

鏡に並ぶ四十女を盗み見る


終電のシートに腰を埋めると

生ぬるい酔いが躯をめぐりだす

女は目をつむる、つむるだけ

決して眠りこみは…できない


時々は思ってみたっけ

知らない駅へ降り立つ自分を

去ってく電車の音を背に

深紅のコートをひるがえし…


ラッシュでもみくちゃにされ

女は絶え々えの息で朝を呪う

腐乱しだした身元不明の遺体

死体なら朝を夜を呪わずにすむが


知ってたような気がする

ずうっと前から

捜すのをやめたずっと前から

捜されなくなった女の身元を


🔰 🔰 🔰 🔰 🔰 🔰 🔰

Killing me softly やさしく殺して♪

好きな歌名をパクりタイトルに

聞くなら断然、ジェシーJで


死んでもいいけど死ぬのは面倒だから

やさしく殺してもらえるならうれしい

そんな甘え、どんな女にもあると思いませんか

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