第40話 ゴブリンロード撃退

 ゴブリンロードが倒れたことでゴブリンの群れはそう崩れとなった。


 元々ゴブリンロードがいたからこそある程度統率がとれていたわけであり、中心となる存在が消えればこうなるのは目に見えていた。


 ゴブリンロードが倒れた時点で逃亡を図るゴブリンも多くいたが、それらも着実に仲間たちが追撃してくれた。


 ゴブリンシャーマンも上手くゴブリンをまとめきれておらず、その隙にユニーの弓やフェレスの投擲攻撃で倒されていた。

 

 ホブゴブリンはパワーもあって厄介と言えたが、頭は良くない。他の仲間が慌てふためく姿にどうしていいかわかっておらず、攻撃を仕掛ければ反撃はしてくるが精細さに欠けるものであり力任せの攻撃は対峙したナックルの巧みなフットワークによって翻弄されミスを連発していた。


 その上で急所めがけての拳の連打で地面に沈んでいく。

  

 キリンも槍さばきが冴えていた。それにどうやらエペが掛けた魔法の影響も大きいらしい。肉体を頑強にする魔法を掛けたようだ。


 一方で僕たちも援護に加わりマジュの魔法は勿論、ウルも闘争本能をむき出しにして牙と爪でゴブリンどもを蹴散らしていった。


 僕も標識を召喚し落石などで追撃。火気厳禁も設置し引き続きマジュの魔法をサポートした。


 こうしてゴブリンの残党ももれなくして倒した。ただやはり逃げるゴブリン全てを片付けるのは難しかった。


 数が多かったのもある。どちらにしても外に出ていたゴブリンもいる以上、今日だけで全滅は難しいだろう。


 今回はゴブリンロードを倒せただけで十分に結果を出せたと言える。ブレブもそう判断しているようだ。


「皆よくやった。特にネロの標識召喚の力は大きかったと思う」

「いえ。標識はあくまで支援でマジュの魔法があったからこそロードは倒せたと思う。それにフェレスや皆が動いてくれたタイミングも良かったです」


 敢えてフェレスを強調した。僕の意図を理解して動いてくれたのは彼女だと信じていたからだ。


 その証拠に他の皆もフェレスを称えてくれている。


「私の魔法は本来あそこまでとんでもない威力はないわ。ネロの標識の力があったからこそロードを倒せたのよ。それにトドメもネロが刺したようなものだしね」


 マジュが僕を評してそんなことを言ってくれた。正直嬉しかった。里では使えない召喚魔法と言われ危うく殺されかけたというのにこの国では僕の力を正当に評価してくれる。


「今回の討伐はネロの召喚魔法があったからこそにゃ。もっとネロは自信を持っていいにゃ」

「そうですよ。ウルもネロは凄いと言ってます!」

「怪我もそこまでじゃないしな」

「あはは。私の出番はあまりなかったですね」

「そんなことないわよ。怪我が少なく済んだのもエベの魔法で身の守りが固くなったからこそだし」

「それを言ったらユニーの弓も凄かったですよ」


 ユニーとエベも互いに称え合っていた。この戦いは全員がしっかり役割を全うしたからこそだ。


 僕の召喚魔法を評価してくれたのは嬉しいけど誰が一番ということはないはずだ。


「……とにかくこれで依頼はほぼ達成だな」

「そうだな。とは言え念のためこの辺りを細かく調べておこう」


 ブレブが次にすることを口にした。確かに反対側の横穴などはまだ見ていない。


 ゴブリンが潜んでる可能性は勿論、もしかしてお宝が隠されてるかもなどとナックルは期待しているようだ。


「それぞれ組になって動いてもらおうか」

「それならあたしはネロと」

「いや。ネロはアグレイと頼む」


 フェレスが僕に駆け寄ってきてブレブに一緒に回ると言おうとしたみたいだけど先に組む相手を決められてしまった。


 フェレスは僕の腕を取ったままブレブを威嚇する。


「どうしてにゃ! なんでよりによってそいつにゃ!」


 フェレスが叫んだ。しかし密着度が――柔らかい感触に頬が赤くなるのを感じた。


「アグレイいいか?」

「リーダーがそういうならな」


 個人的には意外だったけどアグレイは文句を言うこともなく承諾してくれていた。


 後はフェレスだが――


「リーダーがそう決めたなら僕は従うよ」

「で、でも」

「大丈夫だよ。ちょっとこの辺りを調べるだけなんだし」

 

 どことなく心配そうなフェレスを宥めた。実際ゴブリンロードも倒れた以上危険はほぼないと言っていいだろう。


「悪いな。アグレイとわだかまりがあるのはわかってる。だけどこうやってゴブリンロードも倒された。もうアグレイが君を疑う理由もない筈だ。それなら誤解を解く意味でも、ね?」


 それがブレブの考えだ。やはりお互い冒険者でありこじれたままでは今後の為に良くないと思ってくれたのかもしれない。


「よろしくねアグレイ」

「……ふんっ。じゃあ俺たちはこっちを調べるぜ」

「あぁ頼んだ」


 アグレイがリーダーのブレブに探索場所を伝えそして僕とアグレイは一番奥の横穴へ向かうこととなった――


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