第4話 パーキングエリア

 朝、目が覚めると魔力がすっかり回復してる感覚。標識召喚で出した建物で寝て回復できてるのかな? と起きてから考えたけど、どうやらそれは問題なかったらしい。


 時計を見ると時間は朝の七時だった。ちなみに時間の概念はもう一つの世界とこの世界は二十四時間で同じなようである。


 外を見るとしっかり明るくなっていた。電灯も消えている。


「こっちは途中で食べられるように残しておこうかな」


 昨日使った自動販売機は三種類。後五種類残っているけど三種類は後のために取っておいた方がいいだろう。


 ただ飲み物は途中で必要かもしれない。ペットボトルの自動販売機からお茶というのを選んだ。出てきたお茶はよく冷えている。


 すると自動販売機の初回サービスと表示されていた部分が回転を始めた。数字が並び揃ったことで当たりと出る。


『当たりが出たのでもう一本』


 どうやらこの数字が揃うともう一本もらえるらしい。せっかくなのでスポーツドリンクというのを選んだ。


 これで飲み物の確保は出来た。改めて入ってきた場所から出てみると森に戻ってきていた。


 標識も消えている。やっぱりこの標識は入ると勝手に消えるようだ。だから魔力もパーキングエリアの標識を出した時にしか減らなかったんだと思う。


 さて、飲み物二本は荷物預かり所に預けておいて僕は移動を再開させる。


 魔力も回復したからまた最低時速の標識を召喚して移動を開始した。今度は思い切って最低速度50kmを使用する。


「こんなに速く移動できるなんて――」

   

 正直かなり驚いた。これで旅がかなり楽になる。


 ただ魔力はぐんぐん減っていく気分だ。それでも昨日よりは元気だけど一時間ぐらい走ったところで流石に疲れが出た。

 

 一旦休憩を取ることにする。


「これ、飲んでみようかな」


 スポーツドリングという飲み物を飲んでみた。なんでも吸収力が早く体力回復に繋がるらしい。


「美味い!」


 スポーツドリンクは甘みがあってしかもグビグビいける飲みやすさだった。少しずつ飲もうかと思ったけどあっという間に飲みきってしまう。


「まいったな。でもこのペットボトルは使えそうかな」


 途中で水を入れておくのに良さそうだ。そんなことを考えていると体に変化を感じた。


 これは魔力が回復してる――そうだスポーツドリンクのおかげで確かに魔力が回復してる感覚がある。驚いた。どうやらマジックポーションと似た効果がスポーツドリンクにはあるらしい。


 しかも疲れも取れてきた気がする。


「凄いなスポーツドリンク……」


 その効果に驚きつつも移動を再開させた。結構な距離を移動してきたとは思う。とは言えまだカシオン共和国までは掛かるか。


 また標識で移動してもいいけどあまり調子に乗りすぎるのもよくないと考え、徒歩を選択。


 暫く移動すると僕よりも巨大なカマキリと遭遇した。あの鎌で切られたら僕なんてイチコロだろう。


「標識召喚・動物注意!」


 僕はまた別の標識を試してみることにした。熊が描かれた標識が召喚されるとどこからともなく巨大な熊が現れた。少し驚いたけど現れた熊は巨大カマキリと戦ってくれた。


「キシャアアアアア!」

「グォォォォォォォオオ!」


 カマキリと熊の戦い。熊はとても強かった。鎌で切られようと平然としており果敢にカマキリに挑みかかりあっさりと倒してしまった。


「凄い――ありがとう」

「くま~♪」


 褒めてあげたら熊は嬉しそうだった。こうしてみると愛嬌があって可愛い。だけどものすごく強い。


 標識を消すと熊も消え去った。倒したカマキリは――何かに使えるんだろうか? 素材については詳しくないから一旦預かり所に預けておく。


 こうしてその日も移動を続ける。途中でお茶も飲みきった。さっぱりして美味しい。喉は潤ったけど、お茶には魔力を回復する効果はなかったようだ。


 その後は幸いなことにカマキリ以外に出くわすことはなかった。


 夜になったのでパーキングエリアに移動した。小屋にはよく見るとゴミ箱があることに気がついた。


 不要なペットボトルなんかはここに捨てれるようだね。ただ今回は水を注いで持ち歩こうと思う。


 食事はおにぎりというのを食べてみることにした。もう一つの世界では米というのがあってそれを握ったのがおにぎりらしい。


 中身はツナマヨと表示してあった。


「う、美味い! もう一つの世界の食べ物はどれも美味しいんだな……」


 おにぎり一個とはいえ満足感があった。まだ道程はありそうだし今日はこれだけにしておこうと思う。


 水は補充したけど缶の飲み物も買っておこうかな。今回もスポーツドリンクとお茶にした。


 ペットボトルよりは小さいけど飲み物としては十分だと思う。


 そしてその日もパーキングエリアの中で眠りについた――

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