第6話

 孫策は、一応は軍を立て直して来た。

 期待していた袁胤は、敗走したとのこと。

 袁術は……、献帝というか曹操の命令で潰されるだろう。

 滅亡が決まっているのを知っている。


 それと、河北の情報が入って来ない。

 俺には、そこまで使える手駒がいない。

 唯一の軍師は、虞翻ぐらいだ。


 陳瑀と王朗は、元の領地に帰って行った。孫策が荒したので復興からだな。

 それと、俺を盟主……古い制度だが"覇者"として認めてくれた。

 江南江東の半分を、取り返したからだ。


 戦況は、こちらが有利。

 揚州の未来は……、俺が本気を出せば、すでに決まっている。


「唯一の懸念点は、孫策の配下だな。俺には脳筋の配下しかいない」


 できれば、吸収して配下に置きたい。

 俺の配下は、山賊上りが殆どだ。治水や開墾、城壁修理など誰もできない。

 少しずつ孫策を削って行くか。


 孫策は、まだ軍を完全には立て直せていない。基盤となる曲阿城で反乱を起こされたからだ。

 その間に、手薄の城を奪って行く。空き巣戦法だな。盗賊の得意とするとこだ。

 収穫の時期が来ても、孫策は動けなかった。

 そして、兵士が逃げ出して行った。


「ふっ……。徳が違うんだよ」――キラン





 まず、蔣欽、周泰、陳武、凌操といった武将が降って来た。これで、孫策は、まともな軍事行動を起こせなくなっただろう。だが、良将はまだいる。油断は禁物だな。

 後は……、文官だな。俺の知る限り、周瑜、魯粛、張紘、張昭、秦松、陳端あたりか? 決してw〇kiから引用ではないとだけ言っておこう。もっと、知将はいるのだし。


 一年を過ぎる頃には、曲阿城で大規模な反乱が起きたとか。

 ふっ……。税が高すぎたんだな。内政がなっていない。

 結局孫策は、孫堅の元領地の長沙に向かった。

 人材の得られない孫策……。恐れるに足りない。


 俺は、曲阿城に入り、民衆に食料を施した。そして、丹陽郡を手中に収めた。

 もう、民心爆上がりだったな。

 当たり前すぎて、驚くに値しない。これが、徳というものだ。


「さて江南江東は手中に収めたな」――キラン


「徳王様。押さえておくべき城があります」


 虞翻からだった。


「何処だ?」


「柴桑にございます。今の内に難攻不落にしておけば、孫策も劉表も攻めて来ることはないでしょう」


 ……なるほど。忘れてた。





 柴桑は、俺が向かっただけで降伏して来た。

 まあ、王威だな。

 こいつらは、分っている。優遇してやろう。


 柴桑の城と周辺を固める様に指示を出す。ここは、川が多く守に易く、攻めるに難しい。

 それと、江南江東の各城の城主たちだ。貢物を持って来た。


 見ているか孫策……。これが徳というものだ。

 虐殺を繰り返して、平定した土地では、人口を戻すのに大幅な時間を要するのだぞ。

 ふっ……。覇者との差を見せつけてしまったか。

 そんな時だった。


「河北からの使者だと?」


「献帝の名を出しておりますが、追い返しますか?」


 ……この時期だと、あれか。


 一応、礼儀作法の為、膝をついて、話を聞く。


「袁術を討てとの御下命だ。曹操・呂布・劉備と連合を組むように」


「……承知」


 使者はもてなさない。どうせ、酒も食い物にも文句を言うだろうから。

 即日帰って貰った。


「兄者……。どうするんだ?」


「まあ、任せておけ」

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