佐和商店怪異集め番外編

宵待昴

第1話 あるかもしれない未来の話

※「クリスマスループ」を書く前にフライングで書いた話




「ーーすみれ?大丈夫か?」

「は、はい。すみません」

「ゆっくり行きたいんだが、こう人が多いとな」

さかきは菫の手を引きながら、苦笑いを浮かべる。菫も小さく笑う。

「お休みですしね。仕方ないです」

休日の公園。公園と言っても、大きな公園で、娯楽施設もあり混雑している。

よく晴れて、行楽日和なことも原因の一つ。

「家で休んでたかったんじゃないですか?」

「心はそうなんだけどよ、身体は鈍るんだわ……」

「確かに……」

真剣に考え込む菫を、榊は複雑な表情で見ている。だが、息を一つついて、笑った。

「菫が焼いたクッキー、外で食べたいじゃん。こんな天気良いんだし。もっと美味くなるだろ」

「榊さん、よくそういうことさらっと言えますね……」

菫が少し頬を染めて俯くのを、榊は手を引いて木陰に連れて行く。驚く菫を木に軽く押し付け、その両頬を両手で優しく引っ張る。

「店の外で二人きりの時は、何て呼ぶんだっけ?」

菫は耳まで真っ赤になって顔を逸らそうとするが、榊は許さない。恥ずかしさで涙目になりながら、榊を見上げる。

「……こう、さん」

榊はニヤッと笑って、手を離す。

「よく出来ました」

「……意地悪」

菫の精一杯の抗議に、榊は優しく笑って頭を撫でた。

「直ぐ慣れるさ。一緒に居るこれからの時間の方が長いんだからな」

榊は歩き出す。菫は言われた言葉の意味を飲み込んで、榊の隣に並んで歩き出した。





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