雨宿りの次は?②

「勝っっっっっったぁぁぁ!!」

「20回!20回勝負だって!!」

「嫌でーす。3回勝負からどれだけ伸ばしたと思ってんの?」

「千咲だって途中再戦求めてきたじゃん!」

「知らなーい。悔しいならお風呂上がったらまた受けて立ってあげる」

「あー!!悔しい!!!」


 勝敗は14勝15敗でオレの負け。実力差はそこまでなかったので本当にいい勝負ができていた。だが、決定的なことがあったとするならば、相手の癖を読むのが聡善さんの方が早かったことぐらいだ。

 でも負けは負けだ。お風呂は後にするとして、上がったら再戦を申し込ませてもらう。

 立ち上がって体を伸ばした聡善さんは後ろを振り返り、姉さんに声をかける。


「星澤さーん。一緒に一番風呂入ろー」

「わかりました……」


 なぜか気疲れしている姉さんはゆっくりと立ち上がり、聡善さんの後ろをついていく。

 するとなにかを思い出したかのように「あ、そうだ」と呟いた聡善さんは振り向き、


「匠海の着替えは勇のを着てね。星澤さんはワタシの服だからねー」


 リビングにそう言い残した聡善さんは楽しそうに姉さんとお風呂場の方へと向かっていった。

 リビングに取り残されたオレとお兄さんの間には静寂が訪れる。

 そんな静寂を打ち破るようにオレはお兄さんに向かって先程聡善さんが使っていたコントローラーを差し出す。


「一緒にやります?」

「え、いや……お、お手柔らかに……」


 渋々とコントローラーを握ったお兄さんが選んだキャラは魔王のスマッシュおじさん。

 最初は様子見と言うことで先程まで使っていた緑色の帽子を被ったおじさんを選んだオレだったが……これは相当な手加減が必要なようだ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る