決してストーカーではありません②

「電車だとやっぱ早いなぁ」


 電車を降りた私は小声で関心の声を上げ、ペアルックカップルの数十m後ろをバレないように歩く。


 隣の車両だったこともあり、二人の様子は見れなかったけど……この二人の感じ的に話せてないな?ていうかそもそも話そうとしてないな?お互いがお互いに話されたら応える、という姿勢なのか知らないけど、傍から見ると変人カップルだよ?ペアルックしてるくせに話さないのは流石に違和感がありすぎる……。


 駅からドリームまちまで少しだけ距離があるのでその間に「少しでも会話をしてくれ!」という願いを込めて手を握るワタシだったけれど、結局なにも話すことはなかった。けれどドリームまちに入ってすぐに勇が声をかける。


「服を見るのはGEで大丈夫ですか?」

「はい。大丈夫です」

「「……」」


「やった!」というワタシの気持ちは儚く散り、絶望が湧き上がってくる。


 もう会話終わったの?付き合いたてのカップルならもうちょっと会話を広げようとするんだけどなぁ?彼女さんの方はまだ確信は持ててないからわからないけど、相当お互いのこと嫌いだよね。嫌いなら別れればいいのに。


 なんて考えにワタシは頭を振って否定する。


 別れたらワタシが困るんだから絶対に阻止しないと......!これはなんだかの運命なのだからこのチャンスを無駄にしたらダメだ!


 うんうん、と頷いているといつの間にかフードコートの上にあるGEに到着していた。

 遠目に2人がGEに入るのを見届け、ワタシも店内に入っては2人の死角からどんな服を選ぶのか観察する。


 まず、彼女が手に持ったのは白色のパーカー。「今来ているのも白色のパーカーなのに!?」って現場を見ていない人ならそう言うかもしれない。だけど彼女が見ているのは白いパーカーなどではなく、その奥にある薄ピンクのロングスカートだった。

 多分気になるものを目につけているのだと思う。実際ワタシもお金がない時は気に入った服には目をつけている。彼女さんは勇と今の自分の格好で買える服が限られているので目をつけているのだとワタシは考える。


 そんな憶測を立てていると、勇も黒のパーカーを持ちながら別の場所へと視線を向ける。

 ワタシもそっちに目を向けてみると、そこにはいくつかの靴下が並べてあった。


 そういえばこの前靴下が破けたって勇が言ってたっけ?


 数日前のことを思い出しながら2人の方に視線を戻してみると、彼女さんは薄ピンクのロングスカートに合うコーデを考えているのか、顎に手を当てている。そして勇もどんなものがいいのかすごく悩んでいる。


 そんな二人を見ながらワタシは溜息を吐いて言葉をこぼす。


「類は友を呼ぶって言うのはこの事を言うんだね……」


 コーデや靴下が決まってもなお、次に次にと別のものを見る2人は小一時間が経ってやっと満足したのか、どちらからともなく近づいては「フードコートに行きますか?」と勇が提案し「そうですね」と彼女さんが頷く。


 そうして2人はGEを後にし、二階にあるフードコートに向かう。ワタシも2人を追いかけるように距離は開け、急いでエスカレーターを降りる。

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