生臭くて泥臭い、鋼の交わし合い

この作品はとにかく生々しい。

描かれているのはきらびやかで不可思議なファンタジーのヨーロッパではなく、薄汚れて生水と汚物の臭いが立ち込めていそうな暗黒時代の風景です。

わずかな切り傷が命に関わりかねない、そんな不衛生な世界で、その日をどうにか生きていた少年が剣を手にとり、あくまで実際的な剣術を学ぶ。

この剣術描写がまた、いっそう生々しい。相手の剣をどう捌いて、どう刃を届かせるのか。そして切られれば痛いし、死ぬ。そんな当たり前の事実を、改めて突きつけられるような、そんな写実的な描写が、この作品の泥臭さを後押ししています。

ままならない世界で、わずかながら力を得た少年が、その後どんな道を進むのか。行く末を見守りたくなる、そんな作品でした。