・あの頃を思えば:デイサービスにて


 再びに次ぐ再びな現代のデイサービス。

 時間はみんな帰る前とのことで、各々せっせとカバンを片付けたり上着を着たりと用意をはじめていた。

 そんな中、筆者であるコーノもイソイソと帳面(利用者一人一人の情報や記録を印したノート)をそれぞれ利用者に返していく。

 それが済むと高見3姉妹が座る席へと寄っていった。



筆者:さっきの話を聞いていて父親とケンカってあるんだなって思いました。当時の父親は絶対的な存在ってイメージでしたけど。


ミエ子:いやまあ、家によるやろ。かかあ天下なんて言葉もあるしな。

セツ:働き手が男だけやった時代はそうなんやろうけど、当時から職業婦人とかちらほらおったしな。

アッコ:セッちゃんも大人になって職業婦人しとったね。

セツ:そうそう。まあウチは好きで仕事しとったけど、嫁の稼ぎを当てにしとるお家もあったで。そういう家の主人は家族に頭が上がらんやろな。


筆者:そうなんですね。でも良一さんは裕福ですし、当時の強いお父さんという感じですね。


ミエ子:弱いもんほどなんとやらや。偉そうなんは虚勢はっとるねん。おかんの物を黙って全部捨てようとして、なんでもかんでも自分の思う通りにして本人の気が済んでも、ウチは不満があったんよ。トシ兄はその思いを汲んでくれたんやと思う。

アッコ:良一お義父様の気持ちも分かるけどね。当時は病で亡くなった人の遺品には穢れがあるとかで早めに整理するもんやったやん。

セツ:せやったなあ。形見大事に置いていても仏にならず付喪神ってな。

ミエ子:その教え、ウチの檀家とは宗教違いやし、家族に相談無しで遺品整理とかはあかんやろ。

セツ:昔のことやん。ほんで、家族のケンカでヨシエ姉の結婚が遅くなったんよな。いつ結婚したんやっけ?

ミエ子:確か、アッコさんが結婚する一年前とちゃう?

セツ:せやったせやった。ヨシエ姉は18かそこらで結婚したんやったな。

アッコ:そうそう、役場でタイピスト(書類の作成の仕事)やってて、それが楽しくてなかなか結婚の話がすすまんかったんよ。お相手は待ちぼうけやね。


筆者:ちょ、ちょっと、待ってください。えと、ヨシエさんが18で結婚してその一年後で19才。で、アッコさんはその2才下だから……17才!?


アッコ:そうなるな。

ミエ子:ちょっと早い思うたやろ?ウチかて結婚したんは19才やし。


筆者:え~、てことは…お話の中でアッコさんは14才で、年をまたいでいるから15才で……トシさんとは2年のお付き合いで結婚ですか!?


アッコ:あ~、そうなるね。


筆者:て、ことは…プロポーズはお付き合いの後だったんですか?じゃあそれ恋愛じゃないですか!?さいしょ、アッコさん、『家同士の付き合いでなるようになって結婚した』とか言っていましたけども、恋愛じゃないですか!?


アッコ:なんや、めっちゃ興奮しとるやん、この子。

セツ:ふふっ、それが結婚を前提としたお付き合いやったんよな。

ミエ子:そうそう、トシ兄ってば『アッコさんから婚約の言質とった』って言うとったわ。

アッコ:言質て……ほんま、あの男は……てか、お付き合いいうか許嫁みたいなもんやで、あれは。

ミエ子:高見家と堤家同士でトシ兄とアッコちゃん二人の気が合えばそういう話にしたかったらしいもんな。


筆者:ですけど、お互いで結婚を決めたんでしょう?

アッコ:そうやけど……


筆者:じゃあ、もう恋愛ですよ!

アッコ:もうええから。


ミエ子:けど、二人でそういう関係になった詳しい話はウチ知らんねんけど?

セツ:そうそう、その辺詳しく!

筆者:ぜひ、参考に聞かせてください!

アッコ:えぇ~……ていうか、もう帰る時間やん。ちょっと、コーノさん!帰りの挨拶をしなさいよ。


筆者:うわ!?ほんとだ!あとで、車の中で聞かせて下さいよ!



 そこでこの場はお開きとなり。筆者であるコーノは利用者様みんなの前に出て、終わりの挨拶と、帰る前に行う『元気に帰るための体操』を行った。

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