第33話 レヴィン、監禁される
水が滴り落ちる音が聞こえたような気がして、レヴィンは薄らと目を開いた。しかし目隠しされているようで何も見えない。どうやら硬い石の床に転がされているようだ。それは感覚で分かった。ひどくかび臭く、空気はひんやりと冷たい。何とかして体を動かそうと試みるが、凄まじい倦怠感のためそれも儘ならない。レヴィンの耳元ではキーキーと小さな鳴き声が聞こえる。恐らくネズミか何かだろう。レヴィンはこの幸運に感謝した。レヴィンは状況を把握しようとするも、頭がボーッとしていて中々機能してくれない。何とかして記憶の断片をつなぎ合わせていくレヴィン。次第に頭にかかっていた靄が晴れていく。
記憶が確かならば――魔法による攻撃を受けたのだ。
その魔法は――【
相手を眠りに誘う魔法だ。高位の付与魔法であり、職業レベルが低く魔法陣を知らないレヴィンは使用できない。アシリアからも聞いていないので学校でも教わらない魔法なのだろう。段々と自分の置かれている状態が把握できてくる。目隠しに猿轡をされ、手足は縛られている。今は何もできそうにないとレヴィンは諦める。隣の方からはむーむーと唸り声のようなものが聞こえてくた。恐らく全員が同じ状態なのだろう。すると、野太い男の声が掛けられる。
「気が付いたか……。何をしても無駄だぞ」
「
誰かの声かまでは分からないが必死に喚いている者がいるようだ。レヴィンは喚いても何にもならないと思い、静かにしている。
しばらくするとガチャッと扉が開く音がする。誰かが入ってきたようだ。
「おう。バージル、どいつがターゲットだ?」
「こいつですな」
そんなやり取りが聞こえ、誰かが近づいてくる気配がする。相手は複数人いるようだが、レヴィンはその中の一人の声をどこかで聞いたような気がした。が、誰かは思い出せない。
「他のヤツらはどうしやす?」
また別の男がレヴィンたちの処遇を確認している。ここに誘拐犯のボスがいるのだろう。
「いつも通りだ。既に書簡は送ったな?」
「はッ! 一昨日、マッカーシー家の邸宅へ送付済みです」
「指定の日まで時間がある。しっかり見張っとけッ!」
そんなやり取りが終わると、足音は遠ざかってい行き、ガチャンと扉が閉まる音がした。
「お前らも運が悪かったなぁ。まぁ仕方ないと思って諦めるんだな」
見張りが何人か残っているようだ。ターゲットと言う言葉から、明確な目標を狙った計画的な犯行なのだろう。思ったより冷静な自分に驚き……はしない。拉致られたことなど枚挙に暇がないくらい経験している。前世でだが。レヴィンは冴えない頭で考える。恐らくこの誘拐には内部に仲間がいるパターンだろう。単なる身代金目的なのか、はたまた奴隷として売り払うのか。或いは両方か、だ。レヴィンは例え、身代金が支払われても身柄が引き渡されることはないと考えていた。ヘルプ君によれば、確か隷属化の魔法が存在したはずだ。使用するには、いくつかの制約の下でという条件があるが。レヴィンはここがどこで、敵の規模がどれくらいなのかについても考えていた。場所が分からなければ脱出できてもどの方角に逃げればよいか分からないし、そもそも扉の向こうに何人の敵がいるかも分からないのだ。何の考えもなく脱出を強行するのは単なる蛮勇であろう。動く
取り敢えず魔法が使える状態にならなければならない。しかし、何かの薬でも使われたのか体が思うように動かせないのだ。恐らく他のメンバーも同様だろう。それならば、今できることをするだけである。レヴィンは
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