31話

「「「「私達、全員と恋人になろうよ」」」」


…ん?聞き間違いかな…?


「あ、あの…今なんて…」


「だから!誰を選んだらいいか悩むなら、全員と付き合っちゃえばいいんだよ!」


「無理して一人を選ばなくていいんだよ!」


「一人じゃなくていいんです…!」


「悩むくらいなら、みんな選んじゃいなさい!」


待って…。


予想外すぎてついていけてないよぉ…。


たしかにそれなら誰もフラれず、傷つかないかもだけど…。


「ちょ、ちょっと待って!?みんな本当にそれでいいの!?」


「いいもなにも、みんなで話し合って出した答えだもん!」


「そうだよ!かずっちには内緒で決めてたんだぁ!」


「ですです…!みんなを幸せにする王子様…素敵です…!」


「ええ!ここにいる全員、ちゃんと納得してのことよ!」


私はずっと誰か一人だけを選ばないといけないと思ってた。


だけど、みんなは四人全員を選んで良いと言っている。


本当にそれでいいと言うなら…


「誰か一人じゃなくて、全員の方を選んでしまう私ですが…みんな大好きです!付き合ってください!」


「「「「はい!付き合います!」」」」


こうして、私は全員が彼女となり、全員の彼女となった。



それからはみんなとそれぞれ話す。


「かずき!これから恋人として、よろしくね!」


「うん!よろしくね!朝日!」


二人で抱き合うと、朝日が夏海と交代する。


「わーい!かずっちー!よろしくー!」


「夏海ー!よろしくねー!」


二人で抱き合うと、夏海と雪が交代する。


「王子様…!これからも素敵な物語を体験しましょう…!」


「うん!いっぱい体験しようね!」


二人で抱き合うと、雪と楓さんが交代する。


「ふふ!これからは生徒会以外でも頼らせてね!」


「はい!任せてください!」


最後に楓さんと抱き合い離れると、四人が抱き合い、喜び合う。


なんだか、軽い感じがするかもだけど、私達には今はこれくらいがいいと思う。



それからは五人で、会話をしていると朝日が、なにかを思い出したようにみんなに言った。


「そういえば…キスって誰からするの?」


あ、朝日!?と動揺している私をよそに、四人が会話を続ける。


「あーたしかにー!」


「そ、そうですね…。どうしましょう…」


「たしかに、それは考えてなかったわね…」


みんなが一斉に私を見るけど、決められないだろうなぁ…という顔をすると四人で話し合う。


うぅ…。


そうだけどぉ…。


ごめんねぇ…。


なかなか決まらず、相談をしている四人に余計迷わせてしまうけど、ちゃんと伝えないといけないことがあった。


「あ、あの…私…ファーストキス…まだなんだけど…」


「うん!知ってるよ!ちなみに私もファーストキスまだなんだー!」


「あさっちから聞いてたから知ってるよー!あ、私もまだだよー!」


「わ、私もまだです…。あと、朝日先輩に聞いてました…」


「わたくしもよ!それと、中谷朝日から聞いたわ!」


「えぇ!?朝日どういうこと!?っていうかなんで知ってるの!?」


「情報の共有は大事だからね!それと、なんで知ってるかは、かずきのお母さんとずっとチェック…あ、なんでもない」


「まって!?お母さんとチェックってなに!?ねぇ!?」


「なんでもなーい!」


それ以降はいくら問いただしてもなにも教えてもらえなかった。


お母さんとチェックってなに…。


唖然としてる、私をよそにまた四人での相談が始まる。


「んー…どうしよー」


「あ、それならさ!一番はあさっちでいいんじゃない?」


「ですね…!朝日先輩でいいと思います…!」


「そうね!あなたが一番好きだった期間も長いし!」


「え…でもそれは…」


みんなが、いいからいいからと言い、一番は朝日に決まった。


その後の順番と場所は、みんなそれぞれしたい場所があるらしく、タイミングも一番以外はそれぞれが決めるとのことだった。


私はてっきりここでするのかと思っていたので、少し安心していた。


みんなに見られながらするの恥ずかしいもん…。




そうして、明日はテスト終わりの打ち上げをすることが決まり、時刻はすでに夕方だったので、ここで解散という話になる。


「あ、ねぇねぇみんな!最後にさ…」


私が一つ提案する。


「いいねー!やろやろ!」


「かずっちー!ナイスだよー!」


「はい…!さすが王子様…素敵です…!」


「ええ!いいわね!」


みんなが了承し、五人がピースをする。


そして、ある形を作ると声を合わせ言う。


「「「「「みんなで幸せになろー!!!」」」」」


五人の指で形作られ、赤い夕日に照らされた、みんなの思い出の星に。


願いではなく…これからの想いを。

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