幼馴染な妹が俺にだけ冷たい

闇野ゆかい

第1話幼馴染の妹は冷たい

「しむーってさ、佐白野さんに嫌われてね?」

「だな……」

俺の席の机に両手をついて、廊下側の壁付近で数人の女子が談笑するのに瞳を向けて、訊いてきた浦脇。

俺は他人事のような興味のなさげな声で返した。

「だなって、おいおい……目の前にいる嶋村に言ってんだぜ。当事者に聞いてんだぜ、分かってる?」

「周知の事実を聞かれたから、頷いたんだけど……何がご不満だ、蒼太そうた?」

「はっ!……その愛想のねぇ態度、ムカつくわ〜!いつからかって、聞いてんの。俺はさー」

鼻と鼻がぶつかりそうな距離まで顔を近づけてきた彼。

「いつから、ねぇ……さぁ、どうだったけ」

「白々しいにも程があるわッ!しむーって、無自覚に誰か傷付けてそ〜」

「俺に限らず誰もが誰かしらを傷付けてんだよ、蒼太」

「うぜぇ〜その返し」

「ウザくて、面倒くさいことくらい自覚してる」

彼のしかめ面から視線を逸らし、佐白野らが談笑する方向に向ける。

佐白野と視線が合い、同時に顔を背ける二人だった。

「何してんだ、しむー?」

「どうもしてないっ!」

怪訝な表情の彼が怪訝そうに訊いてきたので、声を荒げ返した。

「柚奈、まずかった?ウチのあんって」

「えっ、ううんっ!良いと思う、それ」

「よかったぁ〜」

佐白野と多知川の声が聞こえた。


放課後を迎え、ファッションの話題で盛り上がる佐白野らのグループの横を通り抜けて帰宅した俺。


通学路のコンビニ前に差し掛かった時に、スマホからラインのメッセージが送られた通知音が聞こえた。

前方にも後方にも通行人がおらず、立ち止まりブレザーのポケットからスマホを取り出してアプリのラインを起動させる。

あるアニメの男性キャラをアイコンにしている相手が、『遊ぼ〜』とメッセージを送ってきた。

『コンビニ前なんで、もうすぐです』、と返信したらすぐに既読がつき、『待ってる〜♡』とメッセージが送られてきた。


一軒家の門扉の前に佇み、深呼吸を終えた俺はインターフォンを鳴らす。

インターフォンの電子音が鳴り止むと同時に玄関扉が開いて、女性が姿を現した。

「けーちゃん、おかえりっ!インターフォンなんて鳴らさなくてもいいって言ってるのに。さぁさぁ、上がって上がって!」

佐白野遥香が満面の笑みで迎えてくれた。

嶋村家の隣、佐白野家に俺は訪れた。



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